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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成13年長審77号
件名

プレジャーボートマリン遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年3月19日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:マリン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
遊泳者が骨盤を骨折

原因
操船不適切(遊泳者から十分に遠ざかって航行しなかったこと)

裁決主文

 本件遊泳者負傷は、遊泳者から十分に遠ざかって航行しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月12日15時20分
 大村湾北部三越浦

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマリン
全長 2.45メートル
機関の種類 電気点火式
出力 47キロワット

3 事実の経過
 マリンは、2人乗りのFRP製水上オートバイ(ヤマハ発動機株式会社製造、型式GJ8、モデル名MJ−700LTD)で、A受審人が、平成13年8月12日12時00分、船舶所有者からマリンを借り受けて長崎県川棚町三越漁港において、友人2人とともに乗り出し、12時30分頃同漁港対岸の浜辺を休憩場所とし、同浜辺100メートルばかり沖合で遊走した。
 ところで、水上オートバイは、旋回及び高速航行などの操縦技術を競うもので、急旋回は高度な操縦技術を要し、高速力での旋回中に推力がなくなると急速に旋回惰力を失い、船体が横滑りのまま減速して行くことになるので、旋回力を得るために旋回前の速力調整、旋回中に推力を上げて旋回方向に体重移動するとともに操縦ハンドルを旋回方向に切るなどの訓練が必要であったが、A受審人は、自らは水上オートバイを所有せず、平成8年から1人及び2人乗りの水上オートバイを借り受けて年間2回程度、平成13年にはこれまで2回の操縦経験があったものの、急旋回についての経験も知識も十分でなかった。
 こうして、15時15分A受審人は、マリンに1人で乗り組み、浜辺の沖合で遊走し、同時19分54秒浜辺から60メートル沖合の片島山頂から288度680メートルの地点において、N(以下「遊泳者」という。)が浜辺から約10メートル、水深約50センチメートルのところで座り込んでいるのを認め、遊泳者の直前で急旋回し、そのときに生じる水しぶきを遊泳者に浴びせて驚かそうとしたものの、自動二輪車や自動車と同じ要領で旋回するときに減速すれば旋回が容易になると思い、水上オートバイの旋回に関する知識や経験がほとんどなかったにもかかわらず、急旋回を失敗したときには遊泳者に衝突するおそれがあったが、このことに気付かず、遊泳者から遠ざかって進行することなく、遊泳者を左舷船首間近に見て、著しく接近した状態となる針路をほぼ西方に定め、時速40キロメートルの対地速力で進行した。
 こうして、A受審人は、15時19分59秒2人を左舷船首方に見て約5メートルに接近したとき、左に急ハンドルをとって、スロットルを下げたところ急速に減速して旋回惰力を失い、わずかばかり左旋回しただけで、遊泳者に向かって横滑りするのに気付いたが及ばず、15時20分片島山頂から285度730メートルの地点において、船首が原針路から約15度左方に向き、約30キロメートルの速力で右舷船首が遊泳者に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
 その結果、マリンには損傷なく、遊泳者は骨盤を骨折し、3箇月の安静加療を要するに至った。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、長崎県大村湾北部三越浦において、遊泳者から遠ざかって航行せず、急旋回についての十分な経験も知識もないまま、遊泳者に水しぶきを浴びせようとして遊泳者の直前で減速して転舵したため、急速に旋回惰力を喪失し、横滑り状態で遊泳者に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、長崎県大村湾北部の三越浦において、水上オートバイで遊走する場合、遊泳者から遠ざかって進行すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、急旋回したときに生じる水しぶきを遊泳者に浴びせようとして、遊泳者の直前で旋回するときに減速すれば、自動二輪車や自動車と同じ要領で急旋回できるものと思い、遊泳者から遠ざかって進行しなかった職務上の過失により、遊泳者に著しく接近して進行し、遊泳者の直前で減速して転舵旋回して急速に旋回惰力を失い、横滑り状態で遊泳者との衝突を招き、遊泳者に骨盤骨折を負わせ、3箇月間の安静加療を要するに至った。





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