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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成13年長審第72号
件名

プレジャーボート太地遊泳者負傷事件

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年3月11日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(河本和夫、平田照彦、亀井龍雄)

理事官
弓田

受審人
A 職名:太地船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
遊泳者2人が頭部挫創等

原因
水上オートバイ走行上の基本的事項の不遵守

主文

 本件遊泳者負傷は、水上オートバイ走行上の基本的事項の遵守が不十分で、遊泳者に向けて近づいたことによって発生したものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月28日15時18分
 鹿児島県阿久根市折口海岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート太地
登録長 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 77キロワット

3 事実の経過
 太地は、2人乗りのFRP製水上オートバイで、A受審人が平成13年7月28日正午ごろ友人12人とともに車で折口海岸に運搬し、昼食や太地着水準備の後、15時00分1人で乗り、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水で、阿久根港新港西防波堤灯台から025度(真方位、以下同じ。)2.4海里の海岸波打ち際付近の地点(以下「A地点」という。)と同地点から315度約1,000メートルの地点(以下「B地点」という。)との間を周回し始めた。
 周回中A受審人は、15時17分B地点から太地の速力を最速時毎時約70キロメートル(以下「キロ」という。)、平均約50キロでA地点に向かい、A地点まで約100メートルに達した同時18分少し前、それまで遊泳者がいなかったA地点で友人2人が遊泳しているのを認め、その約3秒後2人まで約50メートルに達したとき、急旋回によってできる波をかけて2人を驚かせようと思い、遊泳者のいる近くでは走行しないという基本的事項を遵守することなく、太地の速力を徐々に下げ、約20キロの速力で2人に向けて近づいた。
 A受審人は、遊泳者の2人に同速力で5メートルばかりに接近したとき、大きく右転したが避けきれず、15時18分A地点において、太地の左舷側後部が2人に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、海上は穏やかであった。
 この結果、太地に損傷はなかったが、遊泳者Kが頭部挫創などで全治1箇月の、同Tが右肩甲骨骨折などで全治約3週間の負傷をそれぞれ負った。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、水上オートバイで走行する際、遊泳者のいる近くでは走行しないという基本的事項の遵守が不十分で、遊泳者に近づきすぎて避けきれず、遊泳者に衝突したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、水上オートバイで走行する場合、遊泳者のいる近くでは走行しないという基本的事項を厳重に遵守すべき注意義務があった。しかるに、同人は、急旋回によってできる波をかけて遊泳者を驚かせようと思い、水上オートバイ走行上の基本的事項を遵守しなかった職務上の過失により、遊泳者の1人に頭部挫創など全治1箇月の、1人に右肩甲骨骨折など全治約3週間の負傷をそれぞれ負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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