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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成13年広審第104号
件名

プレジャーボート奈美丸遊泳者負傷事件

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年3月26日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎、?橋昭雄、中谷啓二)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:奈美丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
M遊泳者が右前腕及び前胸部裂創

原因
後方の見張り不十分

主文

 本件遊泳者負傷は、海岸に船首着けした状態から後退しながら沖出しする際、後方の見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月20日16時25分
 愛媛県南宇和郡 御荘湾

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート奈美丸
総トン数 0.6トン
登録長 6.30メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 奈美丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成13年7月20日05時00分愛媛県南宇和郡御荘町の係船場を発し、御荘湾内で釣りを行ったのち、帰途に就き、16時10分翌日の釣りに使用する小石を収集するため、同湾室手海岸に立ち寄った。
 A受審人は、奈美丸を室手海岸の砂利浜に船首着けし、友人2人を小石集めのために上陸させ、その間同海岸の遠方でカヌーに乗ったり海水浴をしている人が数人おり、また、沖合に養殖用浮標が設置されているのを認めた。
 16時24分半A受審人は、友人たちが戻って来たので、発航地に戻るため室手海岸沖合に向け後退することとしたが、先ほど海岸線を見たとき付近に遊泳者がいなかったことから、遊泳者が奈美丸の後方にいないものと思い、後方の見張りを十分に行うことなく、遊泳者Mが正船尾やや右方約20メートルのところにいて沖合の養殖用浮標に向かって遊泳していることに気付かないまま、右舷船尾の操縦席に腰掛け、船尾を234度(真方位、以下同じ。)に向け、船外機を微速力後進にかけて約2ノットの速力で沖出しを開始した。
 A受審人は、室手海岸沖合約25メートル離れたところで、船首を南西方に向けるために回頭し、船尾を右に振るよう船外機を操作したのち、中立として惰力で後退していたところ、16時25分小貝碆灯台から013度1,300メートルの地点において、奈美丸の推進器翼がM遊泳者と接触した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、海上は穏やかであった。
 その結果、M遊泳者が約2週間の加療を要する右前腕及び前胸部裂創を負った。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、愛媛県南宇和郡御荘湾の室手海岸において、海岸に船首着けした状態から後退しながら沖出しする際、後方の見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、愛媛県南宇和郡御荘湾の室手海岸において、海岸に船首着けした状態から後退しながら沖出しする場合、遊泳者を確かめるよう、後方の見張りを十分に行うべき注意義務あった。しかしながら、同受審人は、先に海岸線を見たとき付近に遊泳者を認めなかったことから、沖合に遊泳者がいないものと思い、後方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同船の推進器翼が遊泳者に接触する事態を招き、同人に右前腕及び前胸部裂創を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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