本件に関し、平成14年3月20日当海難審判庁において、M重工業株式会社神戸造船所(以下「M神戸造船所」という。)に対し、海難審判法第4条第3項の規定により、勧告する旨の裁決が言い渡されたが、本件は、平成13年4月2日M神戸造船所岸壁において、M神戸造船所が、総トン数2,797トンの大型鋼製はしけRB−1のサイドタンク等の点検工事に当たった際、酸素濃度が測定されていないサイドタンクに入った作業員2人が酸素欠乏により窒息ししたものである。
M神戸造船所は、労働安全衛生に関する法令に基づき、「酸素欠乏症等防止管理要領」や「修繕船工事における統括安全衛生管理要領」等を定めていたものの、前示のサイドタンク等の点検工事が、酸素欠乏危険場所で行う作業にも関わらず、酸素欠乏危険作業主任者の選任、監視人の配置、立入禁止等の措置をとっていなかったばかりか、作業責任者間における連絡、調整等を十分に行っていなかった。
すなわち、M神戸造船所が、労働安全衛生に関する法令及び前示の要領等を順守せず、酸素欠乏危険に対する安全衛生管理を十分に行わなかったことは、本件発生の原因をなすものであり、本件発生後、「酸素欠乏症等防止管理要領」の一部改訂などの措置をとったものの、その順守や安全意識の面において十分な改善や反省が認められない。
以上のことから、M神戸造船所に対し、酸素欠乏危険場所で行う作業に当たっては、同種事故の再発防止のため、労働安全衛生に関する法令及び前示の要領等の順守について、その徹底とともに、安全意識の高揚を図り、安全衛生管理に万全を期すよう勧告する。
平成14年3月20日
神戸地方海難審判庁
審判長審判官 阿部能正
(参考)官報公示 平成14年4月15日