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平成13年神審第108号
件名

漁船第五山本丸プレジャーボートアマゾン被引ウェイクボーダー負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年3月18日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(前久保勝己)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第五山本丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:アマゾン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
山本丸・・・損傷ない、
ウェイクボーダーが左腓骨頭骨折

原因
山本丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
アマゾン・・・注意喚起信号不履行(一因)

裁決主文

 本件ウェイクボーダー負傷は、第五山本丸が、見張り不十分で、アマゾンに引航され、滑走中に転倒して海面上に浮上していたウェイクボーダーを避けなかったことによって発生したが、アマゾンが、注意を喚起しなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月1日12時30分
 兵庫県東播磨港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五山本丸 プレジャーボートアマゾン
総トン数 6.31トン  
全長   6.43メートル
登録長 10.34メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力   51キロワット
漁船法馬力数 70  

3 事実の経過
 第五山本丸(以下「山本丸」という。)は、船体中央より少し後方に操舵室を有し、採介藻漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、のり約3トンを載せ、水揚げの目的で、船首0.5メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成13年4月1日12時15分東播磨港二見南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)の南西方1海里付近ののり養殖施設を発し、兵庫県東播磨港西二見地区ののり加工場前の岸壁に向かった。
 A受審人は、発進時から操舵輪後方のいすに腰掛けて操船に当たり、12時28分少し前南防波堤灯台から338度370メートルの地点で、針路を315度(真方位、以下同じ。)に定めて手動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.8ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、春から秋にかけてウェイクボードの滑走が見掛けられる、西二見地区と二見地区との間の水路に向けて進行した。
 12時29分A受審人は、南防波堤灯台から327度720メートルの地点で、針路を308度に転じ、同時29分半南防波堤灯台から323度880メートルの地点に達したとき、正船首170メートルのところに、アマゾンに引航され、滑走中に転倒して海面上に浮上していたウェイクボーダーMと、その左方で停留中のアマゾンをそれぞれ視認できる状況であったが、のり加工場前の岸壁を注視することに気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかったので、Mウェイクボーダーとアマゾンの存在に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、Mウェイクボーダーに向首進行していることに気付かず、同人を避けないまま進行中、12時30分南防波堤灯台から321度1,050メートルの地点において、山本丸は、原針路原速力のまま、その船首部がMウェイクボーダーに接触した。
 当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、視界は良好であった。
 また、アマゾンは、船体中央部右舷側に操縦席を有するFRP製プレジャーボートで、B受審人が、1人で乗り組み、友人2人を乗せ、ウェイクボードを楽しむ目的で、船首0.2メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、12時15分東播磨港西二見地区の望海公園付近の係留地を発し、滑走水域を探しながら前示水路に向かった。
 ところで、ウェイクボードは、スノーボードに似た1枚のボードを用いて行う水上スキーの一種で、ボードに乗ったウェイクボーダーが、モーターボートから延出されたスキーロープ端のハンドルを握り、同ボートによって引かれ、滑走するものであった。
 前示水路に到着したB受審人は、同乗者のうち、Mウェイクボーダーから先に滑走させることとし、12時26分南防波堤灯台から317度1,500メートルの地点で、長さ約18メートルの合成繊維製スキーロープにより、ウェットスーツと救命胴衣を着用し、長さ1.38メートル幅0.40メートルのボードに乗った同人の引航を開始した。
 引航開始後、B受審人は、操縦席に座って操船とバックミラーでMウェイクボーダーの監視に当たり、水路中央付近を東二見橋方向に向け、機関を回転数毎分4,000にかけ、16.2ノットの速力で進行し、その後同橋の手前300メートル付近で折り返したのち、12時28分半接触地点付近に至ったとき、Mウェイクボーダーがバランスを崩して転倒したのに気付いた。
 B受審人は、直ちに機関回転数を下げ、Mウェイクボーダーの北西方50メートル付近でゆっくり左旋回し、12時29分南防波堤灯台から320度1,100メートルの地点で、船首を128度に向けたとき、左舷船首2度220メートルのところに山本丸を初めて視認した。
 12時29分半B受審人は、南防波堤灯台から320度1,040メートルの地点に至り、Mウェイクボーダーを左方に15メートル離し、同一船首方向のまま、機関を中立として停留したとき、山本丸がMウェイクボーダーまで170メートルとなり、同人に切迫する状況となっているのを認めたが、そのうち山本丸がMウェイクボーダーを避けるものと思い、救命胴衣の笛を吹くなどして、注意を喚起することなく、見守った。
 B受審人は、山本丸が避ける気配のないままMウェイクボーダーの至近に迫り、ようやく危険を感じ、12時30分わずか前両手を振って合図をしたが及ばず、前示のとおり接触した。
 その結果、山本丸に損傷はなかったが、Mウェイクボーダーが左腓骨頭骨折などを負った。

(原因)
 本件ウェイクボーダー負傷は、兵庫県東播磨港の西二見地区と二見地区との間の水路において、山本丸が、見張り不十分で、アマゾンに引航され、滑走中に転倒して海面上に浮上していたウェイクボーダーを避けなかったことによって発生したが、アマゾンが、注意を喚起しなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県東播磨港の西二見地区と二見地区との間の水路を航行する場合、海面上に浮上していたウェイクボーダーを見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、のり加工場前の岸壁を注視することに気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ウェイクボーダーの存在に気付かず、これを避けないまま進行して接触を招き、ウェイクボーダーに左腓骨頭骨折などを負わせるに至った。
 B受審人は、兵庫県東播磨港の西二見地区と二見地区との間の水路において、引航中に転倒して海面上に浮上していたウェイクボーダーに山本丸が切迫する状況となっているのを認めた場合、救命胴衣の笛を吹くなどして、注意を喚起すべき注意義務があった。しかるに、同人は、そのうち山本丸がウェイクボーダーを避けるものと思い、注意を喚起しなかった職務上の過失により、ウェイクボーダーの存在に気付かない山本丸が、これを避けないまま進行して接触を招き、前示のとおり負傷させるに至った。





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