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平成13年横審第69号
勧告

件名

ケミカルタンカーニュー葛城乗組員死傷事件

事件区分
死傷事件

指定海難関係人
N海運有限会社

 本件に関し、平成14年3月28日当海難審判庁において、N海運有限会社(以下「N海運」という。)に対し、海難審判法第4条第3項の規定により、勧告する旨の裁決があったが、本件は、換気されない状態となっていた船首ポンプ室において、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」という。)を揚荷後、クロロホルムを洗浄剤としてタンククリーニング中、ポンプ軸シールから同洗浄剤が漏えいしてクロロホルム蒸気が充満していたところ、呼吸具を装着せず、立会者を配置しないまま、一等航海士が弁操作のために同室に立ち入って倒れ、異状に気付いた船長と通信長が救出に入り、船長及び一等航海士が死亡し、通信長が化学熱傷を負ったものである。
 N海運は、MDIを揚荷した後の洗浄剤としてクロロホルムを使用するに当たって、メーカーに相談するなどして同シールの仕様をクロロホルムに耐える適切なものに変更せず、また船員労働安全衛生規則に基づく委員会を船内で定期的に開かせ、運航全体に関する問題点を乗組員から聞く体制をとっていたが、同体制が有効に機能しておらず、船首ポンプ室の換気不良に対処しなかったばかりか、同室への立入りに当たって、呼吸具の準備や立会者の配置などが行われていないことを把握していなかった。
 本件においては、N海運が、タンククリーニング設備のポンプ軸シールの仕様を適切なものに変更しなかった点船首ポンプ室における換気不良の状況を調査して改善しなかった点、及び同室への立入りに当たって、呼吸具の準備や立会者の配置などを指導しなかった点は、それぞれ本件発生の原因となる。
 以上のことから、N海運に対し、同種事故の再発防止のため、安全に対する意識の向上を図って前示委員会を十分に機能させ、タンククリーニング設備の保守管理及び閉所における作業の安全管理に万全を期すよう勧告する。
 平成14年3月28日
横浜地方海難審判庁 
審判長審判官 吉川 進 
 (参 考) 官報公示 平成14年6月18日





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