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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 沈没事件一覧 >  事件





平成13年神審第76号
件名

プレジャーボートうえき屋丸沈没事件

事件区分
沈没事件
言渡年月日
平成14年1月17日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均、西山烝一、小金沢重充)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:うえき屋丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
全損

原因
乾舷確保不十分

主文

 本件沈没は、乾舷の確保が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月27日16時00分
 兵庫県江井ケ島港東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートうえき屋丸
登録長 3.26メートル
1.51メートル
深さ 0.57メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 うえき屋丸は、約30年前に製造された最大搭載人員3人のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人の大人2人及び子供3人を同乗させ、船首尾0.4メートルの等喫水をもって、周遊の目的で、平成12年8月27日15時45分江井ケ島港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)東方約1,500メートルの海岸を発し、沖合に向かった。
 これより先の昼頃、A受審人は、海水浴などの目的で、4家族12人が、うえき屋丸を陸揚げ保管していた海岸に集まったもので、1回目の周遊は、6人が乗船して沖合130メートル付近に設置された消波堤と海岸との間の海域を10分間ばかり航行し、しばらく休憩して2回目の周遊を行うこととしたが、低速力で航行すれば大丈夫と思い、船内に海水が打ち込まないよう、最大搭載人員を厳守して、乾舷を十分に確保することなく、全員が救命胴衣を着用しないまま、同人員を超える員数を乗船させ、乾舷が15センチメートル(以下「センチ」という。)になっていることを認めた。
 ところで、うえき屋丸は、同年3月定期検査を終えてからA受審人が譲り受けたもので、両舷縁上に長さ4メートル8センチ幅5センチ高さ11センチの木材が増設されて舷側がかさ上げされ、同木材の先端部には長さ48センチにわたり板が張られて足場が設置されており、更に、船底から35センチのところに敷き板が設けられていた。
 A受審人は、船首部に大人2人と子供2人を、船尾部に子供1人をそれぞれ配し、自らは船尾部に腰を下ろして船外機を操作し、前示の海域を低速力で一周したのち、15時58分半西防波堤灯台から097度(真方位、以下同じ。)1,500メートルの地点において、針路を沖合に向く200度に定め、機関を微速力前進にかけ2.0ノットの対地速力とし、手動操舵により進行した。
 やがて、A受審人は、船首部に居た同乗者から波が打ち込んでいる旨を知らされ、立ち上がったところ、2隻のプレジャーボートが前方を右方に進行中で、その航走波が舷縁を越えて何度も打ち込み、敷き板の下方に多量の海水が滞留していることを認めて沈没の危険を感じ、海岸に戻るよう舵をとって全速力前進として間もなく、16時00分西防波堤灯台から099度1,500メートルの地点において、船首が反転して020度に向首したとき、ほぼ原速力のまま、浮力を喪失して水平に沈没した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 沈没の結果、後日引き揚げられたが、全損となった。また、A受審人と同乗者は、近くの消波堤に泳ぎ着いてプレジャーボートに救助された。

(原因)
 本件沈没は、兵庫県江井ケ島港東方沖合において周遊を行う際、乾舷の確保が不十分で、最大搭載人員を超える員数を乗船させて航行し、他船の航走波が舷縁を越えて打ち込み、船内に多量の海水が滞留して浮力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県江井ケ島港東方沖合において周遊を行う場合、船内に海水が打ち込まないよう、最大搭載人員を厳守して、乾舷を十分に確保すべき注意義務があった。しかるに、同人は、低速力で航行すれば大丈夫と思い、最大搭載人員を超える員数を乗船させて航行し、乾舷を十分に確保しなかった職務上の過失により、他船の航走波が舷縁を越えて打ち込み、船内に多量の海水が滞留し、浮力を喪失して沈没を招き、全損とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。
 





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