(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年7月20日05時40分
釣島水道
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第二東洋丸 |
総トン数 |
997トン |
全長 |
85.58メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第二東洋丸は、砂利輸送に従事する鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、砂利2,000トンを載せ、船首4.00メートル船尾5.40メートルの喫水をもって、平成12年7月20日01時10分大分港を発し、大阪湾関西空港第2期工事現場に向かった。
ところで、本船の当直体制は、船長、次席一等航海士及びA受審人が4時間単独当直の輪番制で、船長が操船指揮する出入港や狭水道通過に合わせて適宜入直時刻を変更しており、A受審人は、船長増永智章から機会あるごとに乗組員に対して居眠り運航の防止措置として眠気を催したときには、遠慮なく申し出るよう指示されていた。
02時00分増永船長は、速吸瀬戸の北方4海里沖合において、A受審人と交代し、自室で休息した。
ところで、A受審人は、同月18日富山県宮崎海岸を発してから大分港に向かう航海中、10時から14時まで、22時から翌19日02時まで及び10時から14時までの間航海当直に就き、同日18時頃から荷役準備や入航準備作業を行い、23時45分に大分港に着岸後荷役中その監視に就き、翌20日01時10分同港を出港してから後片付けを行い、02時00分に昇橋して当直に就くという就労状況で、19日09時30分から睡眠をとっていなかった。
A受審人は、入直時からいすに腰掛けて見張りに当たり、05時12分伊予灘航路第8号灯浮標から138度(真方位、以下同じ。)600メートルの地点において、043度の針路に定め、機関を全速力前進にかけ、12.5ノットの対地速力で潮流によって右方に7度圧流されながら自動操舵で進行した。
当直中のA受審人は、前示のごとく睡眠をとっておらず、眠気を催し、たびたび立ち上がって、コーヒーを飲むなど居眠り防止に努めていたものの、いすに腰掛けているうち、強い眠気を催すようになったが、特に注意を要する他船がいなかったことからいすに腰掛けていても大丈夫と思い、いすから立ち上がるなどして居眠り運航の防止措置をとることなく、いつしか居眠りに陥った。
A受審人は、居眠りに陥ったままで、圧流されて釣島西岸に向かっていることに気付かずに続航し、05時40分釣島灯台から169度500メートルの地点の浅瀬に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力1の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首部から中央部にかけての船底板に亀裂(きれつ)を伴う凹損を生じ、貨物の一部を瀬取りして自力で離礁し、松山港にて応急修理を施し、東予港にて残りの貨物を揚げ荷し、翌日今治港の造船所で修理を行った。
(原因)
本件乗揚は、夜間、伊予灘を釣島水道に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、釣島西岸の浅瀬に向けて進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、伊予灘を釣島水道に向け、単独の船橋当直でいすに腰掛けて航行中、眠気を催した場合、いすから立ち上がるなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、周囲に注意を要する船がいなかったことからいすに腰掛けていても大丈夫と思い、いすから立ち上がるなどして居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って、釣島西岸の浅瀬に向かって進行して乗揚を招き、船首部から中央部にかけての船底板に亀裂を伴う凹損及び積載貨物の一部を瀬取りするなどの損害を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。