(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年12月13日02時30分
佐賀県神集島北東岸
2 船舶の要目
船種船名 |
油送船第七照栄丸 |
総トン数 |
999トン |
全長 |
81.03メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第七照栄丸(以下「照栄丸」という。)は、船尾船橋型鋼製油タンカーで、A受審人ほか7人が乗り組み、ガソリン及び軽油2,000キロリットルを積載し、船首3.4メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、平成12年12月12日20時10分宇部港を発し、唐津港に向かった。
A受審人は、同年8月31日に乗船以来、宇部港、岩国港、関門港黒崎、唐津港等の瀬戸内海西部及び北九州諸港間の白油輸送に月に7から8航海従事しており、宇部と黒崎間の約2時間の航海当直は自身で、岩国と黒崎間、及び宇部と唐津間の約7時間の航海当直は、3時間ほど一等航海士に当直を行わせるほかは、関門海峡、大畠瀬戸等の狭い水域を含めて自身で当直していた。又、荷役については揚げ積みとも4、5時間であり全員で当直に当たっていた。そして入港、荷役、出港、航海、入港を繰り返していた。
A受審人は、12月10日03時00分宇部着、シフト着岸、荷役、15時25分宇部発、21時30分岩国着、翌11日シフト着岸、荷役、15時40分岩国発、12日00時05分六連島沖仮泊、07時00分シフト黒崎着岸、荷役、14時55分黒崎発、17時15分宇部着、荷役と作業が続き、疲労が蓄積され、又十分な睡眠がとれない状況であった。
A受審人は、宇部出港にあたり、次航海の唐津、宇部間の航海中に一等航海士に船体整備を行わせる予定であるので同人に休息を与えるため、唐津まで自分1人で航海当直をすることとした。
A受審人は、関門海峡、倉良瀬戸を通過し、13日01時10分、玄界島灯台から308度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で針路を230度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、11.6ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、周囲に他船がいなくなったので、船橋左舷後部の海図台の前に置かれた椅子に腰掛けて見張りをしながら進行し、01時58分頃眠気を感じたが、転針点まで2海里余りで、その後すぐに入港配置となるので、それまでは居眠りに陥ることはあるまいと思い、椅子から立ち上がって外気に当たるとか、手動操舵に切り替えるとかするなど居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
02時00分頃A受審人は、椅子に腰掛けたまま居眠りに陥り、同時10分半神集島港宮崎灯台から053度4.4海里の転針点に達したが、転針がなされず、同針路、同速力のまま神集島に向かって進行し、02時30分神集島港宮崎灯台から063度0.65海里の地点において、同島北東岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船底外板に亀裂を伴う凹損を生じたが、引船の支援で離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、玄界灘を唐津港に向かって航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定の転針がなされないまま神集島北東岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、玄界灘を唐津港に向かって自動操舵で航行中、椅子に腰掛けて間もなく眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、椅子から立ち上がって外気に当たるなり、手動操舵に切り替えるなりするなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、転針点まであと少しなので、それまでは居眠りに陥ることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰掛けたまま居眠りに陥り、神集島北東岸に向首進行して乗揚を招き、船底外板に破口、亀裂及び凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。