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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第41号
件名

作業船かりゆし乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:かりゆし船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に凹損及び擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月23日05時05分
 沖縄県金武中城港

2 船舶の要目
船種船名 作業船かりゆし
総トン数 12トン
全長 13.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 426キロワット

3 事実の経過
 かりゆしは、鋼製作業船で、A受審人ほか1人が乗り組み、入港支援作業の目的で、船首1.55メートル船尾2.20メートルの喫水をもって、平成13年5月23日05時02分金武中城港南石第2号シーバース灯(以下「シーバース灯」という。)から330度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの南西石油株式会社第3桟橋(以下「第3桟橋」という。)のドルフィンを発し、対岸のマルヰ産業株式会社の佐敷専用桟橋に向かった。
 ところで、第3桟橋南西方100メートルからシーバースに向けて139度方向に南西石油株式会社第2桟橋(以下「第2桟橋」という。)が設置されており、同桟橋は幅が狭く車両が1台しか走行できないので、対向車があるときのために車両待機所(以下、車両待機所については「車両」を省略する。)が3箇所設けられていた。このうち、第1待機所はシーバース灯から325度880メートル、第2待機所はシーバース灯から329度570メートルの地点で、その間は310メートルであった。第1待機所、第2待機所とも長さ30メートルで、第2桟橋から北東側に約10メートル張出しており、第2待機所が第1待機所より約3メートル高く、照明灯も明るいので両待機所の識別は容易であった。また、両待機所の中間の第2待機所寄りに、北東側からさんご礁帯が拡延していた。
 一方、A受審人は、夜間、第3桟橋から佐敷専用桟橋に向かう場合、第2桟橋から20メートルの、第1待機所北北西方60メートルに近づいたとき、同桟橋に平行の針路とし、第1待機所を航過後、前方の第2待機所と後方の第1待機所を目視して船位の確認を行い、両待機所の中間の第1待機所寄りで右転することとしていた。
 A受審人は、機関を後進に掛けて第3桟橋のドルフィンを離れ、機関を微速力前進に掛けて右回頭した後、第2桟橋に向け左回頭し、第1待機所を視認しないまま第2桟橋から20メートルに近づき、05時04分少し前第1待機所を右舷後方に見る、シーバース灯から327度840メートルの地点に達したとき、針路を同桟橋に平行する139度に定め、機関を微速力前進に掛けて3.5ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針したとき、A受審人は、前方に第2待機所を認めたが、いつものように第1待機所北西方で定針したと思い、第1待機所を航過したことに気付いていなかったことから、これを第1待機所と誤認し、その後第2桟橋北東側に拡延するさんご礁帯に著しく接近するようになったが、後方の第1待機所を目視して船位の確認を十分に行わなかったので、このことに気付かないまま進行した。
 かりゆしは、同じ針路及び速力で進行し、05時05分シーバース灯から329度710メートルの地点において、乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底に凹損及び擦過傷を生じ、のち自力で離礁した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、金武中城港において、第3桟橋を発し、マルヰ産業株式会社の佐敷専用桟橋に向かって、第2桟橋に沿って航行する際、船位の確認が不十分で、さんご礁帯に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、金武中城港において、第3桟橋を発し、マルヰ産業株式会社の佐敷専用桟橋に向かって、第2桟橋に沿って航行する場合、第1待機所と第2待機所を目視すれば、船位の確認を行うことができたから、第2桟橋北東側に拡延するさんご礁帯に著しく接近しないよう、後方の第1待機所を目視して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、前方に認めた第2待機所を第1待機所と誤認し、後方の第1待機所を目視して船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、第2桟橋北東側に拡延するさんご礁帯に著しく接近していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船底に凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。





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