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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第53号
件名

漁船明王丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:明王丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に破口、浸水、のち廃船

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月12日21時10分
 沖縄県那覇港西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船明王丸
総トン数 6.5トン
登録長 10.20メートル
機関の種類  ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 明王丸は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、一本釣りの目的で、船首0.6メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成13年7月12日20時00分沖縄県泊漁港を発し、同県慶良間列島ハテ島北西方の漁場に向かった。
 20時29分A受審人は、クエフ島南方灯標から103度(真方位、以下同じ。)5.0海里の地点に達したとき、同灯標の灯火を視認し、針路をクエフ島南西方に拡延するさんご礁帯を右舷方650メートル離す279度に定め、機関を全速力前進に掛け、7.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 20時39分A受審人は、周囲に他船を認めなかったことから、釣りの準備を行うこととし、操舵室を離れ、前方の見張りができない船尾甲板に座り、作業灯を点灯して仕掛け作りを始めた。
 A受審人は、折からの南風と潮流によって右方に4度圧流され、クエフ島南西方に拡延するさんご礁帯に著しく接近するようになったが、仕掛け作りに気を奪われ、操舵室に戻ってクエフ島南方灯標の灯火を目視するなどして、船位の確認を十分に行わなかったので、このことに気付かないまま続航した。
 明王丸は、右方に4度圧流されたまま同じ針路及び速力で進行中、21時10分クエフ島南方灯標から112度560メートルの地点において、乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底に破口を生じて浸水し、のち廃船処理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、泊漁港から慶良間列島ハテ島北西方の漁場に向けて航行する際、船位の確認が不十分で、クエフ島南西方に拡延するさんご礁帯に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、泊漁港から慶良間列島ハテ島北西方の漁場に向けて航行する場合、クエフ島南西方に拡延するさんご礁帯に著しく接近しないよう、クエフ島南方灯標の灯火を目視するなどして、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、前方の見張りができない船尾甲板で仕掛け作りに気を奪われ、クエフ島南方灯標の灯火を目視するなどして、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、クエフ島南西方に拡延するさんご礁帯に著しく接近していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船底に破口を生じさせ、のち廃船に至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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