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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第54号
件名

漁船恵海丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月8日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:恵海丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
舵板が脱落、推進器翼を曲損

原因
針路保持不適切

主文

 本件乗揚は、針路の保持が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月29日17時20分
 沖縄県金武中城港

2 船舶の要目
船種船名 漁船恵海丸
総トン数 7.9トン
登録長 11.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 恵海丸は、一本釣り漁業等に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、まぐろ引き縄漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成13年6月29日16時40分沖縄県金武中城港内の当添漁港を発し、沖縄島南方の漁場に向かった。
 A受審人は、発港後、操舵室で遠隔操縦装置により、舵と機関を適宜使用して防波堤外に出、機関を半速力前進とし、その後、遠隔操縦装置を持って船尾甲板に移り、同甲板の右舷側に座って操縦しながら操業の準備作業に掛かり、16時55分ごろ機関を全速力前進として8.0ノットの対地速力で東に向かって進行した。
 そして、A受審人は、17時10分知名埼灯台から004度(真方位、以下同じ。)700メートルの地点で針路を110度に定め、遠隔操縦装置を足元に置き、時々前方を見て針路の修正を行いながら操業中に使用する仕掛け作りを始めたが、同時15分ごろ少角度の右舵を取ったまま仕掛け作りに夢中になり、右舷前方の金武中城港ウンタク灯標を目視するなどして針路の保持を適切に行わなかった。
 恵海丸は、わずかずつ針路が右にずれ、やがてウンタク瀬に著しく接近するようになったが、A受審人がこのことに気付かないまま同じ速力で続航中、17時20分知名埼灯台から110度1.2海里の地点において、150度を向首して乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、舵板が脱落し、推進器翼を曲損し、船底に擦過傷を生じたが、僚船により引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、浅礁が散在する金武中城港域内において、知名埼北方からウンタク瀬北方を経由して、漁場に向け航行する際、針路の保持が不適切で、わずかずつ針路が右にずれ、ウンタク瀬に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、浅礁が散在する金武中城港域内において、知名埼北方からウンタク瀬北方を経由して、漁場に向け航行する場合、付近の浅礁に乗り揚げないよう、針路の保持を適切に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、遠隔操縦装置を足元に置いたまま、操業中に使用する仕掛け作りに夢中になり、右舷前方の金武中城港ウンタク灯標を目視するなどして針路の保持を適切に行わなかった職務上の過失により、少角度の右舵を取ったままわずかずつ針路が右にずれ、ウンタク瀬に著しく接近していることに気付かず進行して乗揚を招き、舵板を脱落させ、推進器翼を曲損させ、船底に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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