(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年9月14日07時45分
瀬戸内海 平郡水道
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第七福神丸 |
総トン数 |
199トン |
全長 |
59.20メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第七福神丸(以下「福神丸」という。)は、船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、主として山口県岩国港と島根県江津港のチップ輸送に従事していたところ、平成13年9月12日夕方江津港での荷揚げ後、翌13日08時ころ長崎県竹敷港樽ヶ浜に回航され、全員による約7時間の荷役作業が行われてチップ630トンを載せ、船首2.85メートル船尾3.52メートルの喫水をもって、同日15時45分同港を発し、関門海峡を経る進路で広島県大竹港に向かった。
ところで、A受審人は、船橋当直をそれまでどおりの3人による単独4時間交替制とし、自らが4−8直(毎16時〜20時及び04時〜08時の各4時間)に就くほか関門海峡などの狭い水道の操船にもあたることにした。そこで、出港操船に続きその後の船橋当直にあたり、20時ころ当直を交替してその後約4時間の休息をとって、越えて14日00時ころ関門海峡通峡のため昇橋して操船にあたり、01時ころ再び自室に退いて休息し、04時ころ周防灘航路第2号灯浮標付近で昇橋して船橋当直に就き、周防灘を東行した。
ところが、A受審人は、船橋当直にあたって2台のレーダーを作動させながら操舵輪の後方に置かれたいすに腰掛けて当直にあたっていたところ、眠気を覚えるようになった。06時55分天田島灯台から180度(真方位、以下同じ。)0.5海里の地点で、針路を056度に定め、機関を全速力前進にかけて10.5ノットの速力とし、続いていすから立って航海日誌を記入したことで、一時的に眠気を覚ませたものの、その後再びいすに腰掛けて当直にあたり、平郡水道を海図記載の航路線に沿ってその北側を自動操舵で進行中、再度眠気を覚えるようになったが、立って見張りを行うなどして努めて居眠り運航の防止措置をとることなく、いすに腰掛けた姿勢のまま当直を続け、いつしか居眠りに陥ってしまった。
こうして、07時30分福神丸は、舵掛岩灯標に並航して間もなく大畠瀬戸に向かう予定の転針が行われず、上荷内島に向首したまま続航し、07時45分下荷内島灯台から090度1,500メートルの地点において、原針路、原速力のまま上荷内島南西岸に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、福神丸は、船首部船底外板に凹損と多数の擦過傷を、及びプロペラに曲損を生じた。
(原因)
本件乗揚は、山口県平郡水道を東行して大畠瀬戸に向かう際、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定の転針が行われず、上荷内島に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、山口県平郡水道を東行して大畠瀬戸に向かう際、いすに腰掛けた姿勢で単独で船橋当直中に眠気を覚えた場合、仮にも居眠り運航に陥らないよう、立って見張りを行うなどして努めて居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、定針や航海日誌の記入など身体を移動して一時的に眠気を覚ませたものの、その後再びいすに腰掛けたまま当直を続け、居眠り運航の防止措置に十分に努めなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、その後大畠瀬戸に向かう予定の転針が行われず、上荷内島に向首したまま進行して、同島への乗揚を招き、船首部船底外板に凹損と多数の擦過傷及びプロペラに曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。