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平成13年神審第101号
件名

プレジャーボートケイ エヌ乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月14日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、阿部能正、黒田 均)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:ケイ エヌ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂、同乗者1人が頸髄損傷

原因
針路選定不適切

主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月20日10時40分
 兵庫県淡路島北岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートケイ エヌ
全長 7.34メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 84キロワット

3 事実の経過
 ケイ エヌは、船体中央よりやや船首寄りの右舷側に操縦席を設けたFRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人4人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成13年5月20日05時30分兵庫県明石港を発し、同県淡路島富島港沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、06時25分目的地に至ってきす釣りを開始し、4時間ばかり釣りを行ったものの、釣果が良くなかったので、淡路島北岸の岩屋港沖合へ移動することとし、10時22分半江埼灯台から227.5度(真方位、以下同じ。)3.6海里の地点で、針路を同島西岸に沿う039度に定め、機関を回転数毎分3,500にかけ、12.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 10時35分少し前A受審人は、前路に離岸20ないし30メートルのところから約250メートルの幅で波立っている潮目を認め、船体の動揺を軽減するために、潮目を避けることとしたが、航程を短縮しようと思い、陸岸に沿って設置された消波ブロックに近づき過ぎないよう、潮目の沖側へ向かうなど適切な針路を選定することなく、同時35分江埼灯台から247度1.1海里の地点に達したとき、針路を消波ブロックに接航する063度に転じて続航した。
 A受審人は、右舷方の消波ブロックを約9メートル離して東行し、10時40分わずか前甲板に落ちたたばこを拾うために、右手を舵輪から離して前屈みとなった弾みに無意識のうちに左手で右に舵がとられ、身体を起こして前路を見たとき、右転した船首至近に消波ブロックが迫っているのに驚き、左舵一杯としたが及ばず、10時40分江埼灯台から270度230メートルの地点において、ケイ エヌは、原針路に戻ったころ、原速力のまま、その右舷船底後部が淡路島北岸の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底外板に亀裂を伴う損傷を生じたが、のち修理され、船尾甲板の長いすに右舷方を頭にして横になっていた同乗者Fが2箇月の入院を要する頸髄損傷を負った。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県淡路島北岸沖合を東行中、前路の潮目を避ける際、針路の選定が不適切で、同岸に沿って設置された消波ブロックに接航したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県淡路島北岸沖合を東行中、前路の潮目を避ける場合、潮目が陸岸近くに発生していたのであるから、同岸に沿って設置された消波ブロックに近づき過ぎないよう、潮目の沖側へ向かうなど適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、航程を短縮しようと思い、適切な針路を選定しなかった職務上の過失により、消波ブロックに接航し、甲板に落ちたたばこを拾おうとした弾みに右舵がとられて右転し、消波ブロックへの乗揚を招き、船底外板に亀裂を伴う損傷を生じさせ、同乗者に頸髄損傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して、同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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