(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年6月30日17時50分
愛媛県安居島
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第2ユニオン |
総トン数 |
199トン |
全長 |
58.40メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
551キロワット |
3 事実の経過
第2ユニオン(以下「ユニオン」という。)は、鋼製貨物船で、A受審人ほか一等航海士及び機関長が乗り組み、大豆かす400トンを積載し、船首1.90メートル、船尾3.10メートルの喫水をもって、平成13年6月30日11時00分水島港を発し、博多港に向かった。
A受審人は、船橋当直を原則として同受審人が06時から12時まで及び18時から24時まで、一等航海士が00時から06時まで及び12時から18時までをそれぞれ単独で受け持つようにし、状況に応じて適宜変更するようにしていたものであるが、16時25分来島海峡航路第4号灯浮標(以下、灯浮標の名称については「来島海峡航路」を省略する。)の手前で昇橋し、それまで当直に当たっていた一等航海士からいつもよりも早く当直を引き継ぎ、1人で当直に当たった。
ところで、これより先A受審人は、前日の29日昼間の徳島小松島港における貨物倉の床全面にベニヤ板を張る11時間ほどの作業、同日夜半から当日30日早朝にかけての同港から水島港までの航海、同港における荷役監督、燃料油補給などにより、水島港出港時には睡眠が不足し、疲労した状態となっており、同港出港後一等航海士に船橋当直を引き継ぎ、昼食ののち3時間ほど自室で休息したものの、一等航海士から当直を引き継いだとき、なお睡眠が不足し、疲労した状態にあった。
16時33分A受審人は、桴磯(いかだいそ)灯標から297度(真方位、以下同じ。)0.9海里の地点に達し、第2号灯浮標を右舷に通過したとき、クダコ水道を航行するつもりで、針路を安居島と小安居島との間に向首する241度に定め、機関を全速力前進にかけ、自動操舵とし、潮流などの影響により約3度右偏されながら、9.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、定針後操舵室中央の肘掛け付きの高さが75センチメートルのいすに腰掛けていたところ、間もなく眠気を覚えたが、何とか当直を続けることができると思い、機関長を船橋に呼んで2人当直を行うなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、いすに腰掛けたままでいるうち、やがて居眠りし始めた。
こうしてユニオンは、居眠り運航となり、安居島に著しく接近する状況であったが、同針路、同速力で進行中、17時50分安居島灯台から160度300メートルの地点において、安居島南東岸の浅所に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、微弱な北東方への潮流があり、海上は平穏であった。
A受審人は、衝撃で目が覚め、自力離礁不可能と判断し、船舶所有者に連絡するなどし、翌7月1日早朝ユニオンは、手配した引船により引き降ろされた。
乗揚の結果、ユニオンは船首部から中央部にかけての船底に凹損及び擦過傷を生じ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、瀬戸内海安芸灘をクダコ水道に向かって西航中、2人当直を行うなどの居眠り運航の防止措置が不十分で、安居島に著しく接近する状況のまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、1人で船橋当直に当たり、瀬戸内海安芸灘をクダコ水道に向かって西航中、眠気を覚えた場合、睡眠が不足し、疲労した状態であったから、乗組員を呼んで2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、何とか当直を続けることができると思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに腰掛けているうち居眠りし、安居島に著しく接近する状況のまま進行して乗揚を招き、ユニオンの船首部から中央部にかけての船底に凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同受審人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。