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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年仙審第54号
件名

漁船第十八泉宝丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月12日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二、喜多 保、大山繁樹)

理事官
松浦数雄

受審人
A 職名:第十八泉宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
球状船首が脱落、船首部外板に破口等

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月28日18時10分
 青森県八戸港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八泉宝丸
総トン数 19トン
全長 22.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 508キロワット

3 事実の経過
 第十八泉宝丸(以下「泉宝丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船首0.8メートル、船尾2.1メートルの喫水をもって、平成12年7月28日03時00分青森県八戸港を発し、同港東方約20海里沖合の漁場で操業していか約2トンを漁獲し、16時00分帰途に就いた。
 16時10分A受審人は、鮫角灯台から103度(真方位、以下同じ。)20.0海里の地点で、針路を同灯台を船首少し左方に見る288度に定め、機関を全速力前進にかけ、自動操舵として1人で船橋当直に当たり、11.0ノットの対地速力で進行し、17時56分鮫角灯台から028度1.5海里の地点に達したとき、針路を270度に転じ、海底波高計の北側、八戸港外港中央防波堤(以下「中央防波堤」という。)南端とその東側の消波堤との間及び同港西航路を経由して第2魚市場岸壁に着ける予定で、霧雨で視界が制限されたなか、レーダーで八戸港の状況を確かめながら続航した。
 ところで、A受審人は、出港から漁場までの船橋当直、昼いか操業であることから魚群探索や頻繁な移動を行うための操船、漁場からの船橋当直など、約15時間の連続した就労により、そのころ疲労と睡眠不足の状態にあり、眠気を感じたが、なんとか当直を続けることができると思い、また他の乗組員も疲れていると思い、2人当直を行うなど居眠り運航の防止措置をとることなく1人で当直を続け、18時02分鮫角灯台から346度1.4海里の地点で、海底波高計を左舷にかわしたとき、針路を中央防波堤屈曲部付近に向く259度に転じ、その後消波堤が180度方向となったならば中央防波堤南端と消波堤との間に向けるつもりで、舵輪後方の壁面に設けた棚に腰掛け、舵輪に上体をもたせた姿勢でいたところ、間もなく居眠りし始めた。
 こうして泉宝丸は、居眠り運航となったまま同じ針路、速力で進行中、18時10分鮫角灯台から299度2.1海里の地点において、中央防波堤の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は霧雨で風はほとんどなく、視程300メートルで、潮候はほぼ低潮時であった。
 A受審人は、衝撃で目が覚め、自力で消波ブロックから離れ、予定岸壁に着けた。
 乗揚の結果、泉宝丸は、球状船首が脱落し、船首部外板に破口及び船首楼左舷甲板に亀裂を生じ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、青森県八戸港東方の漁場から同港へ帰港中、2人当直を行うなど居眠り運航の防止措置が不十分で、中央防波堤に向首した針路のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、青森県八戸港東方の漁場から同港へ帰港中、疲労と睡眠不足の状態で1人船橋当直に当たり、眠気を覚えた場合、休息中の乗組員を呼んで2人当直を行うなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、なんとか当直を続けることができると思い、また他の乗組員も疲れていると思い、2人当直とするなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、当直を続けるうち居眠りし、中央防波堤に向首する針路のまま進行して同防波堤の消波ブロックへの乗揚を招き、泉宝丸の球状船首の脱落、船首部外板に破口及び船首楼左舷甲板に亀裂をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同受審人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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