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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第64号
件名

漁船第三祐翔丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月12日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄、安藤周二、織戸孝治)

理事官
大石義朗

受審人
A 職名:第三祐翔丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底を損傷、のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月19日05時45分
 北海道根室半島南岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三祐翔丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.77メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 第三祐翔丸(以下「祐翔丸」という。)は、さんま流し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか甲板員3人が乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成13年7月17日18時15分北海道花咲港を発し、北海道納沙布岬南方沖合の漁場に向かった。
 祐翔丸は、21時15分ごろ花咲港南南東方30海里付近に達して操業を開始し、その後南下しながら操業を繰り返し、さんま約210キログラムを獲て操業を終え、翌18日23時00分納沙布岬の南80海里の地点を発進し、花咲港に向け帰航の途に就いた。
 ところで、A受審人は、同月8日からさんま流し網漁を開始して連日の操業を繰り返し、漁場への往復航の船橋当直を自ら行い、漁場では断続的に4時間程度休息をとるだけで長時間の操船及び漁労作業に従事していたので、操業を終え帰途に就くころには疲労が蓄積し、睡眠不足の状態となっていた。
 A受審人は、発進時から単独で船橋当直に就き、機関を全速力前進にかけて12.2ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、操舵室左舷側後部で寝台天井の張出し部に腰を掛け、開放していた左舷側の窓に左腕を乗せた姿勢で見張りに当たりユルリ島東方に向け北上した。
 同月19日04時50分A受審人は、緩島灯台から151度(真方位、以下同じ。)6.2海里の地点に達したとき、針路を蟹岩の東方約0.5海里に向ける350度に定めて自動操舵とし、陸岸に近づくにつれ南西に流れる微弱な潮流により左方に2度ばかり圧流されながら11.9ノットの速力で進行した。
 A受審人は、定針後しばらくして疲労の蓄積と睡眠不足から眠気を催すようになったが、入港まであと少しなので何とか我慢できると思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、同じ姿勢で菓子を食べながら眠気をしのいで見張りを続けるうち、いつしか居眠りに陥り、花咲港東方の海岸に向首したまま続航し、05時45分花咲灯台から038度1.6海里の地点において、祐翔丸は、原針路、原速力で岩礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期にあたり、付近には微弱な南西流があった。
 乗揚の結果、祐翔丸は、船底を損傷し、のち廃船処分された。

(原因)
 本件乗揚は、納沙布岬南方沖合の漁場から花咲港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港東方の海岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就いて納沙布岬南方沖合の漁場から花咲港に向け自動操舵により帰航中、疲労の蓄積と睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、入港まであと少しなので何とか我慢できると思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、寝台天井の張出し部に腰を掛けて菓子を食べながら見張りに当たるうち居眠りに陥り、花咲港東方の海岸に居眠り運航のまま向首進行して乗揚を招き、祐翔丸の船底を損傷させ廃船処分に至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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