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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第60号
件名

遊漁船栄山丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月13日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:栄山丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底全般にわたって破口、擦過傷及び推進器に曲損

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は、針路を保持しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月19日04時15分
 長崎県三重式見港

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船栄山丸
総トン数 4.97トン
登録長 10.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 139キロワット

3 事実の経過
 栄山丸は、漁船兼用のFRP製遊漁船で、A受審人が単独で乗り組み、釣り客4人を乗せ、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年4月19日04時12分長崎県式見漁港を発し、野母埼西方沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、通常は僚船2隻と出航していたが、自船の釣り客が遅れたことから、予定の出航時刻より30分ばかり遅れて単独で出航し、04時14分少し前三重式見港式見防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から270度(真方位、以下同じ。)80メートルの地点において、針路をいつもより幾分南に寄せた247度とし、機関を半速力から15ノットの全速力前進に増速し、手動操舵で進行した。
 A受審人は、操舵室のいすに腰を掛けて操船していたところ、釣り客の1人が操舵室の後方にいたので、舵輪を左手に持って後ろを向いて同人と釣り場まで2時間ほどかかるなどの話をしているうち、いつしか針路の保持が不十分となり、船首が左方に徐々に偏していることに気付かないまま続航し、04時15分防波堤灯台から227度650メートルの白瀬に、南西に向首し、15ノットの速力で乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底全般にわたって破口を伴う擦過傷及び推進器に曲損を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、暗岩などの多い式見漁港を出航中、針路の保持が不十分で、浅所に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、暗岩の多い式見漁港を出航する場合、操舵に専念して針路を保持すべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣り客と会話を交わして針路を保持しなかった職務上の過失により、浅所に向け進行して乗揚を招き、船底に破口などを生じさせるに至った。





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