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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第33号
件名

漁船第八天松丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第八天松丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
左舷側ビルジキールに小欠損、船底に擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月25日22時40分
 沖縄県石垣港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八天松丸
総トン数 11トン
登録長 14.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 242キロワット

3 事実の経過
 第八天松丸は、専らまぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成13年5月25日22時15分沖縄県石垣漁港を発し、同県波照間島南方の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、平成11年12月に第八天松丸の甲板員として乗船し、石垣港内の航路標識の位置、灯質などを含めた水路事情については知っていたが、船長として操船指揮を執るのは二航海目であった。
 A受審人は、登野城漁港前を経て釜口に向け、機関を微速力前進に掛けて3.5ノットの対地速力で、操舵室の右舷側に出て遠隔操縦による手動操舵で進行した。
 22時38分A受審人は、石垣港登野城第2防波堤灯台(以下、航路標識の名称中「石垣港登野城」の冠称を省略する。)から123度(真方位、以下同じ。)780メートルの地点に達したとき、針路を第1号灯標と第2号灯標のほぼ中間に向く167度に定めたところ、折からの東南東風を左舷側から受けて右方に圧流される状況となった。
 ところが、A受審人は、この程度の風ならそれほど風下に圧流されないと思い、針路を第1号灯標と第2号灯標間に向くようにのみ気を遣い、船尾方の第3号灯標と第4号灯標を目視するなどして船位の確認を十分に行わなかったので、水路右側のさんご礁に著しく接近する状況に気付かないまま、同じ速力で進行した。
 第八天松丸は、右方に7度圧流されて続航中、22時40分第2防波堤灯台から133度920メートルの地点において、船首を155度に向けて乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力4の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、左舷側ビルジキールに小欠損を、船底に擦過傷をそれぞれ生じた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、石垣港において、風力4の東南東風を左舷側から受けて右方に圧流される状況下、登野城漁港前を経て釜口に向け出航する際、船位の確認が不十分で、水路右側のさんご礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、石垣港において、風力4の東南東風を左舷側から受けて右方に圧流される状況下、登野城漁港前を経て釜口に向け出航する場合、船尾方の第3号灯標と第4号灯標を目視するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、この程度の風ならそれほど風下に圧流されないと思い、針路を第1号灯標と第2号灯標間に向くようにのみ気を遣い、船尾方の第3号灯標と第4号灯標を目視するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、折からの東南東風に圧流されていることに気付かず、水路右側のさんご礁に著しく接近して乗揚を招き、左舷側ビルジキールに小欠損を、船底に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。





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