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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第38号
件名

旅客船サザンクロス5号乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:サザンクロス5号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
左舷推進器翼に曲損

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月10日17時32分
 沖縄県黒島港

2 船舶の要目
船種船名 旅客船サザンクロス5号
総トン数 19トン
全長 26.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,529キロワット

3 事実の経過
 サザンクロス5号は、沖縄県石垣港と同港周辺の離島との間で定期運航に従事する、旅客定員90人の2基2軸軽合金製高速旅客船で、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客47人を乗せ、船首0.7メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年5月10日17時30分同県黒島港を発し、石垣港に向かった。
 ところで、A受審人は、黒島港内の幅30メートルの水路両側に浅礁が存在し、同港を出航する際には大原航路第15号立標を正船首わずか左に、黒島水路第4号灯標を正船首わずか右に見て航行すれば水路のほぼ中央部を航行することができることを知っていた。
 A受審人は、発航時から操縦席で操舵操船に当たり、舵と機関を適宜使用して右回頭し、防波堤出口に向かった。そして、17時31分少し過ぎ黒島水路第4号灯標から156度(真方位、以下同じ。)800メートルの地点で針路を333度に定め、機関を極微速力前進に掛け、7.0ノットの対地速力で、折りからの北東風により7度左方に圧流されて進行したが、右舷側の干出している浅礁が気になり、その方を見ていて、船首方の大原航路第15号立標や黒島水路第4号灯標を目測するなどして、水路を逸脱しているかどうかが分かるよう、船位の確認を十分に行わなかった。
 サザンクロス5号は、左方に7度圧流されたまま同じ針路及び速力で続航中、17時32分黒島水路第4号灯標から158度660メートルの地点において、水路西側の浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力5の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、左舷推進器翼に曲損を生じたが、減速運転で石垣港まで自力航行し、のち、修理された。

(原因)
 本件乗揚は、黒島港において、風力5の北東風を右舷側に受けて左方に圧流される状況下、同港から出航する際、船位の確認が不十分で、水路西側に存在する浅礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、黒島港において、風力5の北東風を右舷側に受けて左方に圧流される状況下、同港から出航する場合、同港内の幅30メートルの水路両側に浅礁が存在し、同港を出航する際には大原航路第15号立標を正船首わずか左に、黒島水路第4号灯標を正船首わずか右に見て航行すれば水路のほぼ中央部を航行することができることを知っていたのであるから、水路を逸脱しているかどうかが分かるよう、大原航路第15号立標や黒島水路第4号灯標を目測するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、右舷側の干出している浅礁が気になり、その方を見ていて、船首方の大原航路第15号立標や黒島水路第4号灯標を目測するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、折りからの北東風に圧流され水路を逸脱していることに気付かず進行し、水路西側の浅礁に著しく接近して乗揚を招き、左舷推進器翼を曲損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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