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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第44号
件名

プレジャーボートブレンドリII乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月5日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:ブレンドリII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
キールを折損、のち廃船

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月10日21時30分
 沖縄県那覇港西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートブレンドリII
登録長 7.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 9キロワット

3 事実の経過
 ブレンドリIIは、メインセール及びジブセールを装備した最大搭載人員8人のFRP製ヨットで、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、巡航の目的で、最大喫水1.5メートルをもって、平成13年6月10日13時00分沖縄県座間味港を発し、同県屋嘉比島に立ち寄り、16時00分同島を発して同県嘉手納マリーナに向かった。
 ところで、A受審人は、那覇港西方沖合のナガンヌ島周辺海域での巡航経験を豊富に有しており、付近のさんご礁の存在や水深及び航路標識等について十分に承知していた。
 発航後、A受審人は、GPSで嘉手納マリーナの方向を確認し、その方向に向け、機帆走として2.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A受審人は、19時42分ナガンヌ島北西方灯標から280度(真方位、以下同じ。)7.0海里の地点に達したとき、南西の風が吹き出してきたので機関を停止して帆走とし、その風を有効に利用して速力が上がるよう、針路を15度ほど右に転じ、沖縄電力株式会社牧港火力発電所の2本の煙突の灯火に向けて095度に定め、右舷船首5度方向のところに神山島灯台の灯火を視認してナガンヌ島の北方を航過できることを確認した。
 定針後、A受審人は、コックピット右舷側の椅子に腰を掛け、左手で舵柄を持って4.0ノットの対地速力で続航したが、嘉手納マリーナに到着するのが遅くなるのでそのことが気になり、帆走効率を上げるため、帆の状態を注視して操船することに夢中で、ナガンヌ島北西方灯標の灯火を目測するなどして、船位の確認を行わなかった。
 ブレンドリIIは、A受審人が南西風を最大限利用して帆走効率を上げるため帆の状態を注視して操船しているうちにわずかずつ針路が右にずれ、やがてナガンヌ島の北西方に拡延するさんご礁に著しく接近するようになったが、同受審人がこのことに気付かないまま続航中、21時30分ナガンヌ島北西方灯標から072度300メートルの地点において、117度の針路及び4.0ノットの速力で、同島北西方に拡延するさんご礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、キールを折損し、のち廃船処理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、那覇港西方沖合において、嘉手納マリーナに向け帆走する際、船位の確認が不十分で、ナガンヌ島から北西方に拡延するさんご礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、那覇港西方沖合において、嘉手納マリーナに向け帆走する場合、ナガンヌ島から北西方に拡延するさんご礁に接近しないよう、同さんご礁北西端に設置されたナガンヌ島北西方灯標の灯火を目測するなどして、船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、嘉手納マリーナに到着するのが遅くなるのでそのことが気になり、帆走効率を上げるため、帆の状態を注視して操船することに夢中で、ナガンヌ島北西方灯標の灯火を目測するなどして、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、ナガンヌ島から北西方に拡延するさんご礁に著しく接近していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、キールを折損し、のち、廃船に至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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