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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年広審第81号
件名

貨物船第十八親力丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月25日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(伊東由人、竹内伸二、西林 眞)

理事官
道前洋志

受審人
A 職名:第十八親力丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
船首船底に数箇所の破口

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月29日00時45分
 瀬戸内海 山口県佐合ノ瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八親力丸
総トン数 421トン
全長 63.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第十八親力丸(以下「親力丸」という。)は、主として瀬戸内海諸港間の砂利運送に従事する鋼製貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、砂利を積み込む目的で、空倉のまま、船首2.5メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成13年3月28日20時20分愛媛県松山港を発し、上関海峡から佐合ノ瀬戸を経由する予定で、関門港外部埼南方の採石場に向かった。
 ところで、佐合ノ瀬戸は、南側の長島と北側の佐合島との間の幅0.6海里、水深30ないし40メートルの水道で、東側の入り口付近となる長島北端の小山ノ鼻北東方500メートルに亀岩灯標が、西側入り口付近となる佐合島南西方500メートルの浅瀬上に周防筏瀬灯標(以下「筏瀬灯標」という。)がそれぞれ設置されていた。両灯標は可航水域を表す側面標識で、同瀬戸を西行する場合、水源と定められた神戸から下流に向かって航行することになるので、右舷標識である亀岩灯標を左舷に見て航過したのち、左舷標識である筏瀬灯標を右舷に見て航過すれば安全に航行できることを示していた。
 ところが、A受審人は、発航前に目的地までの距離をあたって上関海峡から佐合ノ瀬戸経由で周防灘に入ることとし、同瀬戸を自ら操船して航行した経験がなく、その上夜間単独の船橋当直にあたって通航する予定であったが、同瀬戸に入航する前に備え付けの海図第1108号(安芸灘及広島湾)で確認すれば良いと思い、備え付けの海図にあたりできれば大縮尺の海図第163号(大畠瀬戸至室積港)を購入するなどして、佐合ノ瀬戸の水路調査を十分に行わなかった。
 こうして、A受審人は、出航操船に引き続き単独で船橋当直にあたり、由利島の北方を航行して平郡水道及び上関海峡を通航したのち、翌29日00時25分半室津灯台から302度(真方位、以下同じ。)650メートルの地点で、針路を334度に定め、機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 00時32分A受審人は、室津灯台から327度1.5海里の地点で、水路調査不十分のまま、亀岩灯標の灯光を右舷船首方に、また筏瀬灯標の灯光を正船首わずか左に認めるよう針路を288度に転じて自動操舵によって続航し、その後懐中電灯を点灯して海図台上の海図第1108号を一瞥したものの、筏瀬灯標東方に水深5メートル未満の浅礁が拡延していることに気付かず、同じ針路、速力で進行中、00時45分筏瀬灯標から090度50メートルの浅礁に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮侯は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船首船底に数箇所の破口を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、伊予灘から佐合ノ瀬戸を通航して周防灘に向かう際、水路調査が不十分で、筏瀬灯標東方の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、伊予灘から佐合ノ瀬戸を通航して周防灘に向かう場合、自ら操船して同瀬戸を航行した経験がなく、その上夜間単独の船橋当直にあたって通過する予定であったから、発航前に備え付けの海図にあたりできれば大縮尺の海図を購入するなどして、佐合ノ瀬戸の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同瀬戸に入航する前に備え付けの海図で確認すれば良いと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、筏瀬灯標東方の浅礁に向首進行して乗揚を招き、船首船底に数箇所の破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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