(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年4月30日10時25分
那覇港西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
遊漁船カリブIII世 |
総トン数 |
11トン |
登録長 |
11.75メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
588キロワット |
3 事実の経過
カリブIII世(以下「カリブ」という。)は、2基2軸のFRP製遊漁船兼作業船で、A受審人ほか3人が乗り組み、客10人を乗せ、ダイビングの目的で、船首1.3メートル船尾1.1メートルの喫水をもって、平成13年4月30日09時30分沖縄県宜野湾マリーナを発し、同県神山島南方のダイビングポイントに向かった。
ところで、カリブはレーダー及びGPSを装備していたものの、両機器の画面は操舵室に設置されていて、同室上部のフライングブリッジには遠隔操縦装置とコンパスが設置されているだけであった。
一方、A受審人は、総トン数約11トンのトローリング等を行う遊漁船の専属船長で、神山島周辺には何度となく出掛けていたので同島周辺の水路事情には詳しく、同船にはレーダーが装備されていたものの、平素、目視により船位の確認を行い航行していたので、レーダーの取り扱いに習熟していたわけではなかった。そして、同受審人は臨時の船長としてカリブに乗り組んでいた。
A受審人は、発航時から見通しのよいフライングブリッジに上がり、甲板員Cを見張りに配し、手動操舵で舵と機関とを適宜使用して宜野湾マリーナを出航し、その後、機関回転数を毎分1,700として16.0ノットの対地速力で西に向かって進行した。
そして、A受審人は、10時03分神山島灯台から003度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に至ったとき、霧で神山島が見え隠れする状況となったので、機関回転数を毎分1,200として対地速力を9.0ノットに減じ、針路を同島とナガンヌ島との間に向く217度に定めて続航し、同時10分ごろ神山島を左舷正横に見るころ、雷を伴う豪雨で著しく視界が悪くなったものの、同じ針路及び速力で南下した。
10時16分半A受審人は、神山島灯台から264度1.2海里の地点に達したとき、豪雨は収まったものの、霧で視程が100メートルばかりに制限され、目視による船位の確認を十分に行える状況ではなかったが、そのうち霧が晴れて視界も回復するものと思い、漂泊するなどして視界の回復を待ち、目視による船位の確認を十分に行うことなく、機関回転数を毎分1,000として対地速力を6.0ノットに減じ、霧の中に見え隠れしていた神山島を見て、針路を神山島とクエフ島との間と思える133度に転じて進行した。
カリブは、同じ針路及び速力で続航し、10時24分半A受審人が船位に不安を覚え、C甲板員に操舵を任せ、操舵室に降りてGPS画面を見ていたとき、10時25分神山島灯台から218度1,550メートルのさんご礁に乗り揚げた。
当時、天候は霧で風力3の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、雷、濃霧注意報が発表され、視程は約100メートルであった。
乗揚の結果、船底が大破し、のち、台船で宜野湾マリーナに運び廃船処分された。
(原因)
本件乗揚は、那覇港西方沖合いにおいて、霧で視界が遮られている状況のもと、神山島南方のダイビングポイントに向け航行する際、船位の確認が不十分で、神山島から南方に拡延するさんご礁に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、那覇港西方沖合いにおいて、霧で視界が遮られている状況のもと、神山島南方のダイビングポイントに向け航行する場合、レーダーの取り扱いに習熟していなかったのであるから、漂泊するなどして、視界の回復を待って目視による船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、そのうち霧が晴れて視界も回復するものと思い、漂泊するなどして、視界の回復を待って目視による船位の確認を行わなかった職務上の過失により、霧の中に見え隠れしていた神山島を見て進行し、同島から南方に拡延するさんご礁に著しく接近して乗揚を招き、船底を大破させ、のち廃船に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。