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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第27号
件名

漁船勝洋丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年1月15日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:勝洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
右舷後部船底に破口、のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月19日01時50分
 鹿児島県徳之島東岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船勝洋丸
総トン数 4.97トン
登録長 9.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 139キロワット

3 事実の経過
 勝洋丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成13年4月18日18時50分鹿児島県名瀬港を発し、奄美大島南方17海里ばかりの浮魚礁に向かった。
 ところで、A受審人は、同浮魚礁付近において、同月13日から16日までの間、夜間は漂泊して休息を取りながら日出時から日没時まで一本釣り漁に従事し、17日早朝に帰港して水揚げ及び船体整備作業を行い、同日21時ごろから翌18日05時30分ごろまで睡眠を取り、その後残りの漁獲物の水揚げ及び出港準備作業等を行い、1時間ほど仮眠していた。
 A受審人は、発航時から、単独で操舵操船にあたり、機関を半速力前進に掛けて自動操舵とし、8.0ノットの対地速力で奄美大島北西岸に沿って南西方に進み、21時53分曽津高埼灯台から324度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点で、針路を185度に定め、操舵室内右舷側の物入れの上に腰を掛け、同室側壁に背をもたせ、海潮流により右方に4度圧流されて進行した。
 23時20分A受審人は、曽津高埼灯台から203度8.7海里の地点に達したとき、須子茂離周辺の浅瀬を無事通過して気が緩み眠気を催したが、約1時間後に変針地点に着き、変針してから甲板員と交代するつもりでいたので、それまで我慢できるものと思い、立ち上がって外気に当たるなどして、居眠り運航の防止措置を取らなかった。
 勝洋丸は、いつしかA受審人が居眠りに陥り、変針されないまま徳之島東岸に向かって同じ針路及び速力で続航し、翌19日01時50分金見埼灯台から156度6.1海里の地点に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、右舷後部船底に破口を生じ、のち、廃船処分された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、奄美大島南西方海域において、漁場に向け南下中、眠気を催した際、居眠り運航の防止措置が不十分で、徳之島東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、奄美大島南西方海域において、漁場に向け南下中、気の緩みから眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置を取るべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、約1時間後に変針地点に着き、変針してから甲板員と交代するつもりでいたので、それまで我慢できるものと思い、立ち上がって外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置を取らなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、徳之島東岸に向首進行して乗揚を招き、右舷後部船底に破口を生じさせ、のち廃船に至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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