(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年8月20日14時55分
兵庫県明石港東方陸岸
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート光号 |
登録長 |
7.56メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
66キロワット |
3 事実の経過
光号は、船尾部が操船位置となるFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人等4人を乗せ、船首0.3メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、釣りの目的で、平成12年8月20日06時30分兵庫県明石港を発し、播磨灘東部海域の釣り場に向かった。
これより先、A受審人は、鉄道会社に所属し、通常00時20分から04時過ぎまで仮眠可能の、24時間30分勤務の翌日が非番となる形態で就労中、平素から正午過ぎに帰宅して3ないし4時間の休息をとっていたところ、同月19日朝の勤務明けの後、所用で19時ごろの帰宅となり、いつもの休息がとれず、同日23時ごろ就寝し翌20日05時ごろに起床し、出航を迎えたもので、やや疲労気味であった。
A受審人は、07時30分ごろ釣り場に至って釣りを開始し、その後時折缶ビールで喉を潤しながら、釣果を求めて移動を含む釣りを続けているうち、雨模様となって明石港付近に戻った後に釣りを終え、垂水漁港に寄せて上陸し飲食を伴い友人達と歓談した。
こうして、A受審人は、14時33分垂水漁港を発して帰途に就き明石海峡北部水域へと向かい、明石海峡大橋直下を通過した直後の14時45分播磨垂水港南防波堤西灯台から287度(真方位、以下同じ。)1,470メートルの地点に達したとき、針路を293度に定め、12.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
間もなく、A受審人は、機関室囲壁後方に立ち、舵柄を股間に挟む姿勢で操舵と見張りに当たっていたところ、眠気を感じてきたが、帰港まですぐなので大丈夫と思い、酒気帯びのうえ疲労気味であったから、居眠り運航とならないよう、友人を呼んで2人で見張りに当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく、同囲壁に上半身をもたれて肘をついているうち居眠りに陥った。
A受審人はこうして、14時49分少し前明石港東外港西防波堤灯台から115度2,450メートルの地点に達したことにも、同地点から進路模様が不安定なまま右偏傾向で、平均の針路が306度となり陸岸に向首していることにも気付かずに進行中、14時55分同灯台から085度750メートルの地点において、306度に向首して原速力のまま陸岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首船底に亀裂及び舵軸シューピース部に曲損を生じたが、船齢等との関連で廃船となった。
(原因)
本件乗揚は、明石海峡北部水域を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、明石港東方の陸岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、明石海峡北部水域において、1人で操舵と見張りに当たり西行中、眠気を感じた場合、酒気帯びのうえ疲労気味であったから、居眠り運航とならないよう、友人を呼んで2人で見張りに当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、帰港まですぐなので大丈夫と思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、機関室囲壁に上半身をもたれて肘をついているうち居眠りに陥り、陸岸に向首進行して乗揚を招き、船首船底に亀裂及び舵軸シューピース部に曲損を生じ船齢等との関連で、廃船とさせるに至った。