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平成13年長審第78号
件名

瀬渡船第七良和丸漁船文丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年3月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦、亀井龍雄、平野浩三)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第七良和丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:文丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
良和丸・・・損傷ない
文 丸・・・船体が二つに切断、廃船、船長が頚椎捻挫

原因
良和丸・・・見張り不十分、各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
文 丸・・・動静監視不十分、各種船間の航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第七良和丸が、見張り不十分で、揚縄中の文丸を避けなかったことによって発生したが、文丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月15日13時00分
 長崎県大村湾

2 船舶の要目
船種船名 瀬渡船第七良和丸 漁船文丸
総トン数 10トン 0.4トン
全長 17.35メートル  
登録長   5.63メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 735キロワット  
漁船法馬力数   40

3 事実の経過
 第七良和丸(以下「良和丸」という。)は、操舵室を船体中央部に備えたFRP製瀬渡船で、A受審人が1人で乗り組み、平成13年4月15日長崎県佐世保港、彼杵港などから前日五島列島の各地に運んだ釣り客14人を収容して佐世保港に向かい、12時00分同港で釣り客8人を降ろし、船首0.85メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、12時25分佐世保港鯨瀬ふ頭を発し、彼杵港に向かった。
 ところで、良和丸は、25ノット以上の速力で航走すると滑走状態となり、船首部が水平線に並び死角はほとんどなかったものの、船首瀬渡台の先端に取り付けた2個のゴムタイヤの上部が台より幾分高くなっていたことから、これによって両舷で5度ばかりの死角が生じる状況にあった。
 A受審人は、針尾瀬戸を航過し、12時52分半田島灯台から016度(真方位、以下同じ。)1.7海里の地点において、針路を088度に定め、機関を航海速力前進にかけ、対地速力28.0ノットで手動操舵により進行した。
 A受審人は、この海域を何回も航海していて、その都度何隻かの小型漁船が操業しているのを視認し、付近には漁具を示す旗竿が多数点在していたことから、動きの少ない小型の漁船は操業中であることを知っていた。
 A受審人は、操舵室のいすに腰を掛けて操船に当たって続航し、12時58分田島灯台から060度3.4海里の地点に達したとき、正船首少し右舷寄り0.93海里に文丸がかご縄を揚収しており、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近していたが、船首を振るなどして瀬渡台による死角を補う見張りを行っていなかったので、このことに気付かず、同船を避けないで続航し、13時00分田島灯台から066度4.3海里ばかりの地点において、良和丸の船首が文丸の左舷中央部に後方から50度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、文丸は、船外機付きFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、シャコかご漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日10時30分長崎県里漁港を発し、立神鼻沖1海里ばかりの漁場に向かった。
 10時40分B受審人は、漁場に至って長さ960メートルのかご縄4統を順次投入したのち、11時10分ごろ機関を停止し、電気駆動ローラーによって揚縄にかかり、3統の揚縄を終え、12時52分半田島灯台から067度4.2海里の地点において、船首を038度に向け、約0.8ノットの前進力で最後の縄を揚げ始めたとき、左舷船尾50度3.7海里のところに自船に向首する態勢の良和丸を初めて視認した。
 ところが、B受審人は、自船が操業しているから相手船が避けてくれるものと思い、その後良和丸の動静監視を行うことなく、かごを揚げていたので、12時58分左舷船尾50度0.93海里に接近した同船が自船を避けず、衝突のおそれのある態勢で接近していたが、このことに気付かず、ローラーに挟んだ縄を外し、船外機を始動して前進するなど衝突を避けるための措置をとらないで操業を続け、衝突の直前、至近に迫った良和丸を認め、急いで海中に飛び込んだとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、良和丸は、損傷はなかったが、文丸は、船体が二つに切断して廃船となり、B受審人が頚椎捻挫を負った。

(原因)
 本件衝突は、大村湾において、良和丸が、見張り不十分で、前路でかご縄を揚収している文丸を避けなかったことによって発生したが、文丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、船首方に死角のある状態で大村湾を航行する場合、前路で揚縄中の文丸を見落とさないよう、死角を補う十分な見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、死角を補う十分な見張りを行わなかった職務上の過失により、前路の文丸に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、文丸を二つに切断させたほか、B受審人に頚椎捻挫を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、大村湾においてかご縄を揚収中、自船に向首接近する良和丸を視認した場合、同船の動静確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、動静監視を行わなかった職務上の過失により、良和丸が避航しないで接近していることに気付かず、衝突を避けるための措置がとれず、同船との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:20KB)





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