(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年3月22日06時50分
平戸島西方海域
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船大成丸 |
貨物船シャロウベイ |
総トン数 |
2.99トン |
4,769トン |
全長 |
|
98.50メートル |
登録長 |
9.60メートル |
|
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
|
2,427キロワット |
漁船法馬力数 |
70 |
|
3 事実の経過
大成丸は、九州西岸から日本海にかけて移動しながらいか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、長崎県舘浦漁港を基地として周辺海域で操業を行っていたところ、平成13年3月21日15時30分船首0.50メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、同港を発し、宇久島北西方海域に至って操業を行い、翌22日04時50分ころ操業を切り上げ、所定の灯火を点灯し、舘浦漁港に向かった。
A受審人は、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で東行し、05時41分対馬瀬鼻灯台から360度(真方位、以下同じ。)0.5海里の地点に達したとき、針路を084度に定めて自動操舵として進行した。
A受審人は、入港前に朝食をとることとし、06時35分ころ操舵室の右舷後部でその準備にとりかかり、同時40分生月長瀬鼻灯台から241度4.9海里の地点に達したとき、右舷船首77度2.1海里のところに前路を左方に向かうシャロウベイ(以下「シ号」という。)を視認でき、その後同船とその方位に変化がなく衝突のおそれのある態勢で接近していたが、見張りを十分に行うことなく、6海里レンジに設定したレーダー画面の前面のみをいちべつしたとき、近くに他船を認めなかったことから大丈夫と思い、間もなく食事の準備を終え、操舵室の床にあぐらをかいて食事を始めたので、このことに気付かなかった。
06時47分A受審人は、シ号との方位が変わらないまま0.6海里に接近したが、依然として食事をしていたことから、同船に気付かず、その進路を避けないで続航し、途中、明るくなってきたので航海灯を消灯し、同時50分少し前食事を終え、ビルジの点検を行おうとして操舵室から機関室に至る出入口の引き戸を開けたとき、06時50分生月長瀬鼻灯台から232度3.6海里の地点において、大成丸は、原針路、原速力のままその船首がシ号の左舷後部に後方から64度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
また、シ号は、木材や鋼材の運搬に従事する貨物船で、船長Sほかフィリッピン人17人が乗り組み、空船で、船首2.05メートル船尾4.56メートルの喫水をもって、同月21日16時30分鹿児島港を発し、関門港若松区に向かった。
一等航海士Kは、翌22日04時00分野母埼西方海域で甲板手とともに当直に就いて北上し、06時29分生月長瀬鼻灯台から214度8.1海里の地点において、針路を020度に定めて自動操舵とし、機関を航海速力前進にかけ、14.0ノットの対地速力で進行した。
06時40分K一等航海士は、左舷船首39度2.1海里のところに大成丸の灯火を初めて視認し、間もなく同船が前路を右方に横切り、両船が衝突のおそれのある態勢であることを知るとともに、その後大成丸に避航の気配がないことを認めたが、警告信号を行わず、更に接近したものの、衝突を避けるための協力動作をとらないで続航中、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、大成丸は、船首部を圧壊し、シ号は、左舷後部外板に擦過傷を生じたが、大成丸はのち修理された。
(原因)
本件衝突は、平戸島西方海域において、両船が互いに横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、大成丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るシ号の進路を避けなかったことによって発生したが、シ号が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、単独で乗船して平戸島西方海域を航行する場合、前路を左方に横切る態勢のシ号を見落とさないよう、十分な見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵室の床に座って食事をとるなどして十分な見張りを行わなかった職務上の過失により、シ号に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、大成丸の船首部を損傷させ、シ号の左舷外板に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。