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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年長審第35号
件名

遊漁船海洋丸漁船さいかい衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年3月12日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、亀井龍雄、河本和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:海洋丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:さいかい船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
海洋丸・・・推進器翼に曲損
さいかい・・・両舷中央部を大破、のち廃船

原因
海洋丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主 因)
さいかい・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守 (一因)

主文

 本件衝突は、海洋丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中のさいかいを避けなかったことによって発生したが、さいかいが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月10日10時50分
 長崎県針尾瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船海洋丸 漁船さいかい
総トン数 4.6トン 0.4トン
全長   6.0メートル
登録長 11.50メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 88キロワット  
漁船法馬力数   30

3 事実の経過
 海洋丸は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客6人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成12年12月10日10時47分針尾瀬戸弁天島灯台(以下「弁天島灯台」という。)から204度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点を発し、同地点から航程1.3海里ばかりの針尾島人埼沖合の釣り場に向かった。
 発進後間もなくA受審人は、弁天埼と弁天島間の水路に向かって北上し、10時48分半16.0ノットの対地速力で弁天埼を左舷方に見てつけ回し、同時48分半少し過ぎ弁天島灯台から288度180メートルの地点に達し、右舷船首方約5度に見る赤埼先端の約50メートル沖合に向けて針路を274度に定め、同速力で、手動操舵により進行していたとき、正船首630メートルの前路において漂泊中のさいかいを認め得る状況であったが、弁天埼をつけ回し中に赤埼先端沖合を一瞥(いちべつ)してその辺りには船がいないものと思い、前路の見張りを厳重に行っていなかったので、同船の存在に気付かず、同船に向かって進行した。
 A受審人は、さいかいと衝突のおそれのある態勢であったが、その後も赤埼先端沖合には船がいないものと思い込み、前方の見張りを行っていたものの同船を見落とし、同船を避けないまま続航し、10時50分弁天島灯台から279度830メートルの地点において、その船首部がさいかいの右舷中央部に後方から80度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期で、衝突地点付近には微弱な南西流があり、視界は良好であった。
 また、さいかいは、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日09時00分弁天島灯台から264度1.1海里の西海町畑下の係留地を発し、針尾瀬戸北部の早埼沖合において操業し、10時30分同瀬戸中央部の赤埼先端沖合の衝突地点付近に至って機関を停止し、漂泊して操業を開始し、時折潮上りしては衝突地点付近に戻ることとして釣りを行った。
 10時48分半少し過ぎB受審人は、船首を354度に向けて左舷船尾において操業を行っていたとき、右舷船尾80度630メートルのところに自船に向首進行する海洋丸を認め得る状況であったが、左舷側に垂らした釣り糸の方向を見て、右舷方の見張りを行っていなかったので、同船の接近に気付かず、操業を続けた。
 その後B受審人は、海洋丸が自船に向首したまま衝突のおそれのある態勢で接近していたが、依然として釣り糸の方を見たままで同船の接近に気付かず、機関を使用して移動するなど衝突を避けるための措置をとらずに漂泊して操業を続け、10時50分わずか前至近に迫った同船の機関音に気付いたが、どうすることもできず、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、海洋丸はさいかいに乗り揚げ、推進器翼に曲損を生じてのち修理され、さいかいは両舷中央部が大破して廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、針尾瀬戸において、海洋丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中のさいかいを避けなかったことによって発生したが、さいかいが、見張り不十分で、機関を使用して移動するなど衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、針尾瀬戸において、赤埼先端の沖合に向けて進行する場合、前路で漂泊中のさいかいを見落とすことのないよう、見張りを厳重に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、前路を一瞥して船がいないものと思い、見張りを厳重に行わなかった職務上の過失により、さいかいに気付かないまま進行して衝突を招き、海洋丸の推進器翼を曲損させ、さいかいの両舷中央部を大破させて廃船させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、針尾瀬戸において、漂泊して一本釣りの操業を行う場合、自船に向首進行する海洋丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを厳重に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、操業模様に気をとられ、周囲の見張りを厳重に行わなかった職務上の過失により、同船の接近に気付かず衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:25KB)





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