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平成13年横審第80号
件名

遊漁船第三大黒丸漁船山二丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年3月13日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(長谷川峯清、葉山忠雄、甲斐賢一郎)

理事官
供田仁男

受審人
A 職名:第三大黒丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:山二丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
大黒丸・・・左舷船首部に凹損、右舷船首部に擦過傷
山二丸・・・左舷前部外板に破口、船長と甲板員が頚椎捻挫等

原因
大黒丸・・・見張り不十分、各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
山二丸・・・見張り不十分、警告信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、第三大黒丸が、見張り不十分で、停留して漁ろうに従事している山二丸を避けなかったことによって発生したが、山二丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月7日05時55分
 清水港

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第三大黒丸 漁船山二丸
総トン数 7.3トン 3.11トン
登録長 11.95メートル 9.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 433キロワット 169キロワット

3 事実の経過
 第三大黒丸(以下「大黒丸」という。)は、専ら遊漁船業に従事するFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣客4人を乗せ、マダイ釣り遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成13年3月7日05時43分清水港鉄道岸壁を発し、同港港外の静岡県三保埼鎌岬東方沖合の釣場に向かった。
 ところで、大黒丸は、A受審人が刺網漁船を購入し、マスト及び煙突をそれぞれ起倒式にするなどの改造を施したのち、同11年9月に遊漁船に転用したもので、上甲板の船首端の後方2.3メートルのところから船尾端まで左右それぞれ最大0.25メートルの張出し甲板があり、これを合わせて上甲板とし、その両舷端の高さ0.75メートルのブルワークを含めた船体外板が濃紺に塗装され、また、上甲板上の船首端の後方6.9メートルのところから船尾方に向かって長さ6.5メートル幅1.8メートルの白色に塗装された甲板室が設けられていた。
 甲板室は、船首側から順に、機関室、その後方1.9メートルに客室、3.3メートルに操舵室下部及び4.2メートルに同室上部の各前面があり、これらの頂部の高さがそれぞれ上甲板上0.7メートル、1.3メートル、1.9メートル及び2.5メートルの4段の階段状に造られていた。
 機関室天井上部には、直径0.15メートル高さ2.3メートルの起倒式煙突が、同天井前端から後方1.1メートルで船体中心線から左舷側0.4メートルのところを中心に設けられていた。
 客室天井上部には、高さ1.3メートルの灯火表示用マストが同天井前端から後方0.1メートルの船体中心線上に設けられ、左右両舷灯が同天井前端から後方0.4メートルで同中心線から各0.8メートルに、及び起倒式門型レーダーマストのブームレストが各舷灯後部にそれぞれ取り付けられていた。
 操舵室下部天井上部には、高さ0.7メートルの起倒式門型レーダーマストの左右ポストが、船体中心線から各0.8メートルの同天井前端に設けられ、同マストの頂部中央にレーダースキャナが取り付けられていた。
 操舵室には、同室下部前面に航海計器台、同台の後部中央に舵輪、同室左舷側に固定されたいす及び同いすの上方天井に長さ0.8メートル幅0.6メートルの見張り用開口部がそれぞれ設けられ、船尾灯が同室後方への張出し天井の船体中心線上に取り付けられていた。
 A受審人は、平素操舵室のいすに腰掛けて操船に当たると、煙突、灯火表示用マスト及び門型レーダーマストの左右ポストが前方の視野を妨げるため、港内を航行するときには、舵輪の後部に立って見張りと操船に当たっていた。
 大黒丸の灯火は、灯火表示用マストの頂部に白色全周灯及び同全周灯から下方0.15メートルにマスト灯がそれぞれ取り付けられており、これらの灯火の射光を妨げるものはなかったが、左右両舷灯については、停船状態の喫水船首0.44メートル船尾1.06メートルにおける同両舷灯の水面上の高さと、船首端から後方3.0メートルの左右各ブルワーク上面の水面上の高さとがほぼ同じで、船尾トリムになったり、航走して船首が浮上したりすると、船首方の眼高の低い他船からは、船首の上下動や左右の振れなどによって見え隠れする状況であった。
 A受審人は、購入時の船体改造で、左右両舷灯の位置はそのままとし、マスト灯及び船尾灯をそれぞれ少し低い位置に変更して小型船舶検査機構の検査を受け、これら各灯火の装備上の問題はなく合格して船舶検査証書を受けていたので、左右両舷灯の射光範囲に見えにくい方向があることに気づかないまま、夜間航行に従事していた。
 こうして、A受審人は、航行中の動力船が表示する灯火を掲げ、釣客全員を操舵室後方の船尾甲板に乗せ、発航後防舷材の格納等の作業を終えたのち、05時45分清水真埼灯台(以下「真埼灯台」という。)から221度(真方位、以下同じ。)2,510メートルの地点で、針路を010度に定め、機関を全速力前進が毎分回転数2,200のところ、同回転数800として7.7ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A受審人は、日出前の薄明時で漸く(ようやく)東方の空が白み始めたものの、依然周囲が夜間と同様の暗さの状況のもと、清水港の法定航路(以下「清水航路」という。)を北上するうち、05時51分真埼灯台から247度1,550メートルの地点に差し掛かったとき、同航路を南下する貨物船の灯火を認めたこともあって、同航路外の航路南側を航行することとし、針路を真埼灯台及び清水港外防波堤南灯台の両灯光間に向く062度に転じるとともに、機関を毎分回転数1,000に上げ、9.1ノットの対地速力で続航した。
 転針時にA受審人は、右舷船首2度1,060メートルのところに、船首を北方に向けて多数の作業灯を点灯した錨泊中の貨物船(以下「錨泊船」という。)を認め、同船の船首方を航過することとし、その後船首の上下動も、左右の振れもない状態で、右手で舵輪を持っていすに腰掛けたり、立ち上がったりしながら、前路の見張りと操船に当たった。
 05時52分半A受審人は、真埼灯台から249度1,140メートルの地点に達し、錨泊船が右舷船首3度640メートルとなったとき、正船首1,040メートルのところに山二丸が存在し、同船の白灯1個及び作業灯の明かりを錨泊船の明かりの左方に連なった状態で認めることができ、清水港を基地として出入港を繰り返す遊漁船や漁船であれば、山二丸が漁ろうに従事していることを示す灯火を掲げていなかったものの、刺網による漁ろうに従事し、かつ、停留して揚網していることが分かる状況で、その後同船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近したが、まもなく錨泊船の船首方を無難に航過できることになったこともあって、もう前路に他船はいないものと思い、操舵室天井開口部から上半身を出すなどして前路の見張りを十分に行うことなく、錨泊船の明かりに紛れた山二丸の明かりに気づかず、同船を避けずに同じ針路のまま、機関を毎分回転数1,200に上げて13.5ノットの対地速力とし、船首がわずかに水平線から浮上する状態で進行した。
 その後A受審人は、操舵室のいすに腰掛けて左舷方を向き、袖師ふ頭の奥から出航する遊漁船の有無を確認しながら、依然、山二丸に気づかずに続航中、05時55分真埼灯台から300度160メートルの地点において、大黒丸は、原針路、原速力のまま、その船首が、山二丸の左舷前部に前方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は小雨で風力1の南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界は良好で、日出時刻は06時08分であった。
 A受審人は、衝撃で衝突を知り、山二丸に乗り上がっていることに気づき、機関を後進にかけて大黒丸を山二丸から引き離したのち、事後の措置に当たった。
 また、山二丸は、周年にわたって固定式刺網漁業に従事するFRP製漁船で、船体中央部にある操舵室にモーターホーンを装備し、B受審人が父の甲板員Cと2人で乗り組み、かます底刺網漁の目的で、船首0.25メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、同日05時00分清水港第1区の折戸湾の奥にある清水市折戸の定係地を発し、長さ12メートル未満の航行中の動力船が表示する灯火を掲げ、静岡県知事から清水市漁業協同組合が受けた共同漁業権に基づいて設定された真埼灯台北西方沖合の漁場に向かった。
 ところで、B受審人は、水平距離150メートルを超えて船外に出している漁具の方向に掲げなければならない白色全周灯を含むトロール以外の漁ろうに従事している航行中の船舶が表示しなければならない灯火(以下「漁業灯」という。)について規定されていることを知っていたが、同じ漁場で操業する同業種漁船が漁業灯を装備していなかったことや、清水市漁業協同組合から清水航路内での操業を避けるように指導されていたものの、同灯の表示についての指導がなかったことから、漁業灯を装備しないで、他船接近時に警告信号を行うためのモーターホーンを装備し、夜間行きあしがない状態で行う底刺網操業時には、両色灯を消灯して白色全周灯1個及び作業灯を点灯して操業に従事していた。
 こうして、B受審人は、05時15分前示漁場に到着し、前示衝突地点から264度の方向に長さ約400メートルの底刺網漁具の投網を開始し、約5分間で終了して同地点に戻り、機関を中立として両色灯を消灯し、操舵室天井上部のマスト頂部に設けた白色全周灯1個のほか、同天井前端左舷側の上甲板上高さ1.8メートル及び同室船首側の機関室囲壁前部中央の同高さ1.5メートルにそれぞれ設けた船首甲板照明用の100ワットの作業灯各1個を点灯し、清水港を基地として出入港を繰り返す遊漁船や漁船がこれらの灯火の点灯状況を見れば、底刺網による漁ろうに従事していることが分かる状況で停留を開始した。
 05時50分B受審人は、前示衝突地点で、船首端から後方2.2メートルの左舷側に設けた3段ローラーと称する油圧駆動の揚網機の船体中心線側に立ち、同ローラーの駆動音が大きくて周囲の音が分からない状態で、C甲板員を操舵に当たらせて約30分間を要する揚網を開始した。
 05時52分半B受審人は、底刺網漁具のボンデン、長さ30メートルのボンデン縄、重さ10キログラムの固定錨並びに漁網の浮子方及び沈子方に取り付けた長さ10メートルのワカレと称する取り込みロープを巻き終え、続いて漁網の巻き揚げに取りかかるため、船首が302度に向いた状態で、3段ローラー周囲のロープ類の整理作業を始めたとき、左舷船首60度1,040メートルのところに、港外に向かって東行する大黒丸が存在し、前路の他船から見ると白灯1個を見せて両舷灯が見えないものの、陸上や錨泊船の明かりの反射により大黒丸を認めることができる状況で、その後自船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近したが、底刺網による漁ろうに従事していることが分かる白色全周灯及び作業灯を点灯しているので、接近する他船が避けていくものと思い、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、大黒丸に気づかず、警告信号を行わないまま、行きあしがない状態で同作業を続けた。
 05時55分わずか前B受審人は、漁網の巻き揚げに取りかかろうとして周囲を見たとき、左舷船首60度50メートルのところに、3段ローラー越しに大黒丸の船首波を初めて認め、その直後、自船に向首して避航の気配を見せないまま接近する同船の黒く見える船体を認めたものの、何をするいとまもなく、山二丸は、船首が302度に向き、行きあしのないまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、大黒丸は左舷船首部に凹損、右舷船首部に擦過傷及び山二丸に乗り上がった船体を引き下ろすために後進をかけた際、底刺網をプロペラに巻き付けて機関に損傷をそれぞれ生じ、山二丸は左舷前部外板に破口を伴う損傷、3段ローラーの圧壊及び底刺網漁網の全損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理あるいは新換えされ、衝突の衝撃で転倒したC甲板員が全治3箇月の頚椎捻挫及び頚椎棘突起骨折並びにB受審人が2週間の通院加療を要する頚椎捻挫をそれぞれ負った。

(原因に対する考察)
 本件は、日出前の薄明時で漸く東方の空が白み始めたものの、依然周囲が夜間と同様の暗さの状況のもと、清水航路外の航路南側において、清水港港外の釣場に向けて東行中の大黒丸と、静岡県知事から清水市漁業協同組合が受けた共同漁業権に基づいて設定された漁場内で、停留して底刺網による漁ろうに従事していた山二丸とが衝突した事件である。
 以下本件発生の原因について検討する。
 船舶が表示しなければならない灯火の目的は、海上衝突予防法の灯火に関する各規定に明示されているとおり、船舶の存在、種類、状態あるいは大きさ等を示すことにある。夜間、船舶が他の船舶との衝突を防止するためには、先ず他の船舶の存在を知ることが必要不可欠であり、船舶は他の船舶の存在を知ったのちに初めてその種類や状態、大きさ等を認識することができ、次いで自他両船間の見合い関係を確認し、適用される航法を判断して衝突を防止するために必要な措置をとることができることになる。このためには、法定灯火が適切に表示され、かつ、同灯火を確実に認知できるよう見張りが十分に行われることが必要である。
 ところで、大黒丸の左右両舷灯は、事実の経過に示した状態で装備されており、船尾トリムになったり、航走して船首が浮上したりすると、夜間、船首方の眼高の低い他船からは、船首の上下動や左右の振れなどによって見え隠れする状況であったと認められる。このことは、大黒丸が法定灯火を表示して夜間航行する際、船首方の眼高の低い他の船舶に対し、マスト灯によって自船の存在を認識させることはできるものの、船舶の種類や状態、大きさ等を認識させることが困難であり、法定灯火が適切に表示されていなかったと言わざるを得ない。
 しかしながら、本件発生当時、仮に大黒丸の法定灯火が適切に表示されていたとしても、事実の経過に示したとおり、山二丸の見張りが不十分であったことから、大黒丸が左右両舷灯を適切に表示しなかったことは、本件発生の原因をなしたものとは認めないが、今後、夜間航行時には、法定灯火を適切に表示しなければならない。
 一方、山二丸は、長年清水港内及びその周辺海域において底刺網漁に従事しており、同漁が主として夜間に行われることから、水平距離150メートルを超えて底刺網漁具を船外に出して漁ろうに従事しているときには、清水港を利用するすべての船舶に対し、漁業灯を表示して自船の存在、種類、状態あるいは大きさ等を示さなければならなかった。
 ところが、山二丸は、A、B両受審人に対する各質問調書中に「明かりの具合で刺網漁船が操業していることが分かる。」旨の一致した供述記載にあるとおり、清水港を基地として出入港を繰り返す遊漁船や漁船であれば、山二丸の灯火の点灯状況により、同船が底刺網による漁ろうに従事していることが分かる状況であったこと、同じ漁場で操業する同業種漁船が同灯火を装備していなかったこと、及び清水市漁業協同組合から同灯火の表示についての指導がなかったことなどから、漁業灯を装備せず、行きあしがない状態で行う底刺網操業時には、両色灯を消灯して白色全周灯1個及び作業灯を点灯していた。この灯火表示は、トロール以外の漁ろうに従事している航行中の船舶が表示しなければならない成規の灯火表示に合致せず、自船の漁ろうの形態を示したものではないため、漁業灯が適切に表示されていなかったと言える。また、このことは、他の船舶に対し、適用航法を判断して衝突防止のために必要な措置をとることを困難にさせ、かえって衝突の危険性を増大させるものと言わざるを得ない。
 しかしながら、本件発生当時、仮に山二丸の漁業灯が適切に表示されていたとしても、事実の経過に示したとおり、大黒丸の見張りが不十分であったことから、山二丸が漁業灯を適切に表示しなかったことは、本件発生の原因をなしたものとは認めないが、今後、夜間、漁ろうに従事するときには、自船の存在はもちろんのこと、種類、状態及び大きさ並びに漁ろうの形態等を他の船舶に明瞭に知らせることができるよう、漁業灯を装備してこれを適切に表示しなければならない。

(原因)
 本件衝突は、日出前の薄明時、清水港において、同港港外の釣場に向けて航行中の大黒丸が、見張り不十分で、停留して漁ろうに従事している山二丸を避けなかったことによって発生したが、山二丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、日出前の薄明時、清水港において、同港港外の釣場に向けて航行する場合、港口付近の真埼灯台北西方沖合には、静岡県知事から清水市漁業協同組合が受けた共同漁業権に基づく漁場が設定され、周年にわたって漁船が操業していたから、同漁場で底刺網による漁ろうに従事している山二丸を見落とさないよう、操舵室天井開口部から上半身を出すなどして前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、前路に他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、操舵室のいすに腰掛けたまま左舷方を向き、袖師ふ頭の奥から出航する遊漁船の有無を確認しながら、山二丸に気づかないまま進行して同船との衝突を招き、大黒丸の左舷船首部に凹損、右舷船首部に擦過傷及び山二丸に乗り上がった船体を引き下ろすため後進をかけた際に底刺網をプロペラに巻き付けて機関に損傷を、並びに山二丸の左舷前部外板に破口を伴う損傷、3段ローラーの圧壊及び底刺網漁網の全損をそれぞれ生じさせるとともに、C甲板員に全治3箇月の頚椎捻挫及び頚椎棘突起骨折並びにB受審人に2週間の通院加療を要する頚椎捻挫をそれぞれ負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、日出前の薄明時、清水港において、停留して底刺網による漁ろうに従事する場合、自船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近する大黒丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、底刺網による漁ろうに従事していることが分かる白色全周灯及び作業灯を点灯しているので、接近する他船が避けていくものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、大黒丸に気づかず、警告信号を行わないまま、揚網作業を続けて大黒丸との衝突を招き、両船に前示の事態を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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