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平成13年那審第37号
件名

漁船第三大信丸遊漁船沖一丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年2月19日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第三大信丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:沖一丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
大信丸・・・損傷ない
沖一丸・・・操舵室左舷側窓ガラスに破損

原因
大信丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
沖一丸・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第三大信丸が、動静監視不十分で、前路で停留して遊漁中の沖一丸を避けなかったことによって発生したが、沖一丸が、動静監視不十分で警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月30日13時00分
 沖縄島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三大信丸 遊漁船沖一丸
総トン数 4.9トン 4.9トン
全長   13.10メートル
登録長 11.98メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 242キロワット 264キロワット

3 事実の経過
 第三大信丸(以下「大信丸」という。)は、まぐろ一本釣り漁等に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、引き縄漁の目的で、船首0.8メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、平成13年4月30日03時30分沖縄県泡瀬漁港を発し、沖縄島東方沖合に設置された浮魚礁に向かった。
 A受審人は、3基の浮魚礁周辺で適宜移動しながら操業を行い、まぐろ等約100キログラムを獲ったのち、12時40分ごろ久高島東方浮魚礁灯(以下「浮魚礁灯」という。)の南東方300メートルばかりの地点に達し、同時43分浮魚礁灯から134度(真方位、以下同じ。)250メートルの地点で、引き縄漁を再開するため、速力を4.0ノットに減じたとき、右舷正横500メートルばかりのところに、遊漁中の沖一丸を認めた。
 そして、A受審人は、船尾左舷側に位置して遠隔操縦装置による手動操舵で、極少角度の右舵を取り、浮魚礁灯を170メートル離して右回りで同灯の周囲を旋回しながら引き縄漁を始めたが、沖一丸は同灯から十分に離れた所で遊漁するものと思い、その動静監視を十分に行わなかった。
 A受審人は、2周目に差し掛かり、12時56分半浮魚礁灯から343度170メートルの地点でまぐろが掛かったので、引き続き同じように同灯の周囲を旋回しながら船尾左舷側で後方を向き、まぐろを釣り上げる作業に掛かったところ、同時57分大信丸が090度に向首したとき、右舷船首63度330メートルのところに停留して遊漁中の沖一丸を視認することができ、その後、同船と衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め得る状況であったが、同船の動静監視を十分に行っていなかったのでこのことに気付かなかった。
 大信丸は、極少角度の右舵を取ったまま同じ速力で、沖一丸を避けずに進行し、13時00分少し前A受審人が船首間近に迫った同船を認め、機関を後進としたが効なく、13時00分浮魚礁灯から101度170メートルの地点において、1.0ノットの対地速力で191度に向首した自船の船首と沖一丸の左舷中央部とが直角に衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の南西風が吹いていた。
 また、沖一丸は、主として遊漁に従事するFRP製遊漁兼用船で、B受審人ほか1人が乗り組み、客4人を乗せ、船首0.6メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、遊漁の目的で、同月30日08時00分同県金武中城港を発し、沖縄島東方沖合に設置された浮魚礁に向かった。
 B受審人は、目的地に着き、浮魚礁灯の南東方300メートルばかりのところで機関を停止して停留し、折からの南西風と潮流により北方に圧流されながら遊漁を行い、同灯の北東方300メートルばかりのところまで流されて潮昇りをし、これを繰り返し行っていたところ、9回目の潮昇りのため南下中に低速力で同灯の周囲を旋回しながら引き縄漁を行っている大信丸を初めて認め、12時50分浮魚礁灯から158度300メートルの地点で機関を停止し、船首を101度に向けて0.8ノットの対地速力で011度方向に圧流されながら、客と一緒に遊漁を始めた。
 そして、B受審人は、餌を付け替えるとき、十分に離れた所を低速力で浮魚礁灯の周囲を旋回しながら引き縄漁を行っている大信丸を認めたが、停留している自船に向けて衝突のおそれがある態勢で接近してくることはあるまいと思い、その後、動静監視を十分に行うことなく、右舷船尾で遊漁を続けた。
 B受審人は、12時57分浮魚礁灯から128度190メートルの地点まで圧流されたとき、左舷船尾52度330メートルのところに、同灯の周囲を旋回しながら引き縄漁を行っている大信丸を視認することができ、その後、同船と衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め得る状況であったが、同船の動静監視を十分に行っていなかったのでこのことに気付かなかった。
 沖一丸は、B受審人が、自船を避けずに衝突のおそれがある態勢で接近する大信丸に対し、警告信号を行うことも、更に接近したとき、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることもないまま停留して遊漁中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、大信丸に損傷はなく、沖一丸は操舵室左舷側窓ガラスに破損を生じたが、のち、修理された。

(原因)
 本件衝突は、沖縄島東方沖合に設置された浮魚礁付近において、大信丸が、同浮魚礁の周囲を旋回して引き縄漁に従事中、動静監視不十分で、停留して遊漁中の沖一丸を避けなかったことによって発生したが、沖一丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄島東方沖合に設置された浮魚礁付近において、同浮魚礁の周囲を旋回して引き縄漁に従事中、停留して遊漁中の沖一丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、遊漁中の同船は浮魚礁から十分に離れた所で遊漁するものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、停留して遊漁中の沖一丸と衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けずに進行して衝突を招き、沖一丸の操舵室左舷側窓ガラスを破損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、沖縄島東方沖合に設置された浮魚礁付近において遊漁中、同魚礁の周囲を旋回して引き縄漁に従事している大信丸を認めた場合、衝突のおそれがある態勢で接近しているかどうかが分かるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、停留している自船に向けて衝突のおそれがある態勢で接近してくることはあるまいと思い、同船に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近する大信丸に気付かず、警告信号を行うことも、更に接近したとき、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることもないまま停留して遊漁を続け、同船との衝突を招き、自船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:20KB)





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