(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年1月28日06時16分
福岡県博多港
2 船舶の要目
船種船名 |
押船第八大成丸 |
バージ大成丸 |
総トン数 |
100トン |
約1,767トン |
全長 |
26.00メートル |
71.00メートル |
幅 |
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16.00メートル |
深さ |
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3.15メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
1,323キロワット |
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船種船名 |
貨物船ビッグスワン |
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総トン数 |
2,353.00トン |
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全長 |
84.35メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
1,471キロワット |
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3 事実の経過
第八大成丸は、船首船橋型の鋼製押船で、A受審人ほか4人が乗り組み、船首2.80メートル船尾3.60メートルの喫水をもって、船首1.80メートル船尾3.10メートルの喫水となった空倉の大成丸(以下「バージ」という。)の船尾中央凹部に船首部を嵌合(がんごう)して全長約85メートルの押船列(以下「大成丸押船列」という。)を形成し、平成12年1月28日05時45分福岡県博多港東浜ふ頭を発し、玄界島西方沖合6海里の海砂採取海域に向かった。
A受審人は、離岸後間もなく出港配置を開いて単独の船橋当直に当たり、06時01分博多港西防波堤北灯台(以下、灯台の名称に冠する「博多港」を省略する。)から306度(真方位、以下同じ。)950メートルの地点に達したとき、針路を296度に定め、機関を全速力前進にかけて9.0ノットの対地速力で、マスト灯2灯並びに第八大成丸及びバージにそれぞれ両舷灯を表示し、中央航路内を通る水深12メートルの掘下げ水路(以下「掘下げ水路」という。)の右側端に寄って手動操舵で進行した。
ところで、掘下げ水路は、博多港第1区北部の箱崎ふ頭西側水域から中央航路内を経て同航路西端から西北西方約430メートルまで延び、同航路付近における幅が同航路より40メートル狭い200メートルの狭い通航路で、同航路の少し南側に偏して設けられていた。また、同水路の西口を示す博多港中央航路第1号灯浮標(以下、灯浮標の名称に冠する「博多港中央航路」を省略する。)及び第2号灯浮標が端島灯台から211度380メートル及び同580メートルにそれぞれ設置されており、A受審人は、中央航路を通航して出港する際、平素同水路の右側端に寄って航行していた。
06時11分半A受審人は、端島灯台から139度1,210メートルの地点に差し掛かったとき、左舷船首12度1,460メートルのところに、中央航路南側に存在した錨泊船や操業中の漁船などの灯火の間を北方に向かって進行するビッグスワン(以下「ビ号」という。)の白、白、緑3灯を初めて認め、その後、同船が緑灯を見せたまま、両マスト灯の間隔を次第に狭めていることからゆっくり右転していることを知り、その動静に留意しながら続航した。
A受審人は、06時13分ビ号が左舷船首11度880メートルとなったとき、第1号灯浮標と第2号灯浮標間に向首して右転を停止したので、同船が掘下げ水路西口を経由して中央航路を東行する船舶であり、自船が同水路の右側端に寄って航行していることから、同水路西口付近で互いに左舷を対して無難に航過できるものと判断した。
間もなくA受審人は、中央航路を出て掘下げ水路西口に近づき、06時14分半端島灯台から170度570メートルに至ったとき、ビ号の白、白、緑3灯を第2号灯浮標の少し右方に認めたものの、同船が再び右転して同水路の右側端に寄ることなく、同水路を斜航する態勢で接近するので不安を感じ、機関を半速力前進に落とした。
A受審人は、06時15分左舷船首17度200メートルに迫ったビ号が左転を始めて自船の前路に進出するのに気付き、急いで汽笛により長音1回を吹鳴したのち、右舵一杯をとるとともに機関を全速力後進にかけたが、及ばず、06時16分端島灯台から194度430メートルの地点において、大成丸押船列は、船首が000度を向き、5.0ノットの対地速力になったとき、ビ号の右舷船首部がバージの左舷前部に後方から20度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、視界は良好で、潮候は下げ潮の中央期にあたり、日出は07時18分であった。
また、ビ号は、船尾船橋型貨物船で、船長Bほか12人が乗り組み、大豆2,709.36トンを載せ、船首4.72メートル、船尾5.90メートルの喫水をもって、同月25日00時36分(現地時間)中華人民共和国大連港を発し、越えて28日02時18分博多港中央航路南西方の検疫錨地に至り、端島灯台から204度1,880メートルの地点で錨泊したのち、06時00分抜錨し、航行中の動力船の灯火を表示して同港須崎ふ頭に向かった。
B船長は、三等航海士を見張りに、操舵手を手動操舵にそれぞれ就けて操船の指揮を執り、機関を極微速力前進にかけて4.0ノットの対地速力とし、第1号灯浮標と第2号灯浮標間を通るつもりで、小舵角をとってゆっくりと右転しながら博多港第3区を北上し、06時13分端島灯台から221度640メートルの地点に達したとき、針路を第2号灯浮標の少し左方に向く088度に定めて進行した。
定針したときB船長は、右舷船首17度880メートルのところに掘下げ水路を右側端に寄って西行する大成丸押船列の白、白、紅、紅4灯を初めて視認し、06時14分半第2号灯浮標を右舷側に見て航過し、掘下げ水路に入ったものの、さらに右転して同水路の右側端に寄ることなく、同水路を斜航する態勢で続航し、間もなく船首少し右方約400メートルとなった同押船列に衝突の危険を感じて左舵一杯を命じたところ、同押船列の前路に向かって進出する状況となり、ビ号は、船首が020度を向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、第八大成丸は、損傷がなく、バージは、左舷前部外板、船尾ブルワーク及び舷側外板に凹損などを、ビ号は、右舷船首外板に擦過傷及び右舷船尾ギャングウェイなどに損傷をそれぞれ生じたが、のちバージは修理された。
(原因)
本件衝突は、夜間、福岡県博多港中央航路西側の掘下げ水路において、同航路に向けて東行中のビ号が、同水路の右側端に寄って航行しなかったばかりか、同水路の右側端に寄って西行する大成丸押船列の前路に進出したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。