(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年2月14日11時31分
兵庫県福良港
2 船舶の要目
船種船名 |
第八正幸丸 |
総トン数 |
999トン |
全長 |
88.94メートル |
幅 |
14.50メートル |
深さ |
8.60メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第八正幸丸(以下「正幸丸」という。)は、船尾船橋型冷凍運搬船でA受審人ほか19人が乗り組み、兵庫県福良港港奥南側に所在する造船所で第2種中間検査工事を終え、別途残工事を施工するため回航の目的で、空倉のまま、船首1.50メートル船尾4.27メートルの喫水をもって、平成13年2月14日11時10分同所を発し、静岡県清水港に向かった。
ところで、福良港は、港口を南西方に開き、幅約0.5海里奥行約1.3海里の港で、その中間付近の北側に洲崎島が存在し周囲には石浜が広がり、同島南端から南南東方400メートルにかけて防波堤が延び、同堤中央付近に可航幅45メートルの切通しがあって、港奥への通航路となっていた。
A受審人は、今回の工事で初めて福良港に入港し、港内の操船水域が狭く、狭隘な防波堤の切通しがあることを知ったもので、冬型の気圧配置で北北西風が増勢し、空倉で乾舷が高いとき低速力で進行すると圧流が強まる状況下、切通し通過時に船体横方向からの風を受けることを承知のうえで、発航することとしたが、慎重に操船に当たれば大丈夫と思い、風が収まるまで発航を中止しなかった。
こうして、A受審人は、機関を後進にかけて離岸し、港奥中央付近で機関を前進に切り替え、手動操舵でゆっくり右回頭したのち、防波堤の切通しに向かい、11時28分福良港灯台から109度(真方位、以下同じ。)645メートルの地点で、切通しの北側に向け針路を248度に定め、機関を微速力前進にかけ、2.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、折からの強い横風により左方に約14度圧流されながら続航し、11時31分少し前切通しの南側に著しく寄せられるので、急ぎ右舵15度の当て舵をとったが効なく、11時31分福良港灯台から125度560メートルの地点において、正幸丸は、原針路原速力のまま、その左舷前部が防波堤突端に衝突した。
当時、天候は曇で風力5の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
衝突の結果、正幸丸は、左舷前部外板に亀裂を伴う凹損を生じ、防波堤突端が欠損した。
(原因)
本件防波堤衝突は、兵庫県福良港において、冬型の気圧配置で北北西風が増勢し、空倉で乾舷が高いとき低速力で進行すると強風により圧流が強まる状況下、狭隘な防波堤の切通しの通過を伴う発航を中止せず、強い横風により防波堤に圧流されたことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、冬型の気圧配置で北北西風が増勢し、空倉のため乾舷が高いとき低速力で進行すると強風により圧流が強まる状況下、狭隘な防波堤の切通しの通過を伴う兵庫県福良港を発航する場合、切通し通過時に船体横方向からの風を受けることを承知していたのであるから、防波堤に衝突することのないよう、風が収まるまで発航を中止すべき注意義務があった。しかるに、同人は、慎重に操船に当たれば大丈夫と思い、発航を中止しなかった職務上の過失により、強い横風により防波堤に圧流されて同堤との衝突を招き、正幸丸の左舷前部外板に亀裂を伴う凹損を生じさせ、防波堤突端を欠損させるに至った。