日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年神審第91号
件名

漁船茂丸プレジャーボート(船名なし)衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年2月14日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:茂丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:プレジャーボート(船名なし)乗組員

損害
茂 丸・・・損傷ない
小松号・・・底板などを損傷、乗組員が右腓骨骨折

原因
茂 丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
小松号・・・注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、茂丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中のプレジャーボート(船名なし)を避けなかったことによって発生したが、プレジャーボート(船名なし)が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。 

適条
 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月15日10時50分
 兵庫県淡路島西岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船茂丸 プレジャーボート(船名なし)
総トン数 4.9トン  
全長   2メートル
登録長 11.49メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
漁船法馬力数 35  

3 事実の経過
 茂丸は、ひき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が弟と2人で乗り組み、船首0.2メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成12年12月15日07時00分兵庫県淡路島の育波漁港を発し、播磨灘南東部の漁場に至り、探索の結果、魚影がなかったので、09時40分操業を中止して帰途についた。
 A受審人は、舵輪後方に設置した長いすの左舷側に腰掛け、弟をその右舷側で休息させ、1人で操舵と見張りに当たって淡路島西岸沿いに北上し、10時47分淡路室津港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から239度(真方位、以下同じ。)720メートルの地点で、針路を053度に定め、機関を全速力前進にかけ11.5ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針したときA受審人は、正船首方1,060メートルのところに、プレジャーボート(船名なし)(以下「小松号」という。)を視認することができる状況であったが、間もなく入港する右舷前方の育波漁港を見ることに気を取られ、船首方の見張りを十分に行わなかったので、小松号の存在に気付かなかった。
 その後、A受審人は、小松号が錨泊中の形象物を表示していなかったものの、船首が風に向いて移動しないことから、錨泊していることがわかる同船に向首したまま接近していることに気付かず、錨泊中の小松号を避けずに続航中、10時50分西防波堤灯台から044度350メートルの地点において、茂丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、小松号の左舷側中央部に、直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、小松号は、濃緑色のゴム製空気充填式の手漕ぎボートで、B指定海難関係人が1人で乗り組み、船首尾0.2メートルの等喫水をもって、釣りの目的で、同日07時00分西防波堤灯台東方の海岸を発し、約300メートル沖合の釣り場に向かった。
 07時15分B指定海難関係人は、前示衝突地点である目的地に到着し、重さ2キログラムの錨を水深5メートルの海底に投じ、これに接続した直径6ミリメートルの錨索を船首部から12メートル伸出して錨泊し、同地点が漁船などの通常航行する水域であったが、錨泊中の形象物を表示しないまま、船尾方を向いて腰を下ろし釣りを始めた。
 10時47分B指定海難関係人は、船首が323度に向いていたとき、左舷正横1,060メートルのところに、北上中の茂丸を初めて視認し、その後同船が自船に向首したまま接近するのを認めたが、有効な音響による注意喚起信号を行わず、更に間近に接近したとき、錨索をたぐって少し前進するなど、衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けた。
 10時50分少し前B指定海難関係人は、茂丸が至近に迫って衝突の危険を感じ、手を振り大声で叫んだが効なく、小松号は、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、茂丸は、損傷がなかったが、小松号は、底板などを損傷し、B指定海難関係人が右腓骨骨折などを負った。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県淡路島西岸沖合において、北上中の茂丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中の小松号を避けなかったことによって発生したが、小松号が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県淡路島西岸沖合を帰航のため北上する場合、前路の小松号を見落とさないよう、船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、間もなく入港する右舷前方の同県育波漁港を見ることに気を取られ、船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、小松号の存在に気付かず、錨泊中の同船を避けないまま進行して衝突を招き、小松号の底板などに損傷を生じさせ、B指定海難関係人に右腓骨骨折などを負わせるに至った。
 B指定海難関係人が、兵庫県淡路島西岸沖合において釣りのため錨泊中、茂丸が自船に向首したまま間近に接近したのを認めた際、衝突を避けるための措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。


参考図
(拡大画面:24KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION