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平成13年横審第74号
件名

漁船池田丸遊漁船茂丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年2月22日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(葉山忠雄、小須田 敏、甲斐賢一郎)

理事官
供田仁男

受審人
A 職名:池田丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士(5トン限定)
B 職名:茂丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士(5トン限定)

損害
池田丸・・・右舷船首部外板及び右舷船底外板に破口、浸水
茂丸・・・操舵室及び機関室囲壁が損壊、遊漁客1人が両側大腿打撲

原因
池田丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
茂丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、池田丸が、見張り不十分で、前路で停留中の茂丸を避けなかったことによって発生したが、茂丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。 

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月15日07時50分
 千葉県八幡岬南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船池田丸 遊漁船茂丸
総トン数 4.98トン 4.50トン
登録長 10.30メートル 10.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 180キロワット 183キロワット

3 事実の経過
 池田丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、きんめだい立縄漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成12年12月15日04時00分千葉県鴨川湾内の浜荻漁港を発し、同県八幡岬南方約14海里の漁場に向かった。
 A受審人は、05時50分ごろ漁場に到着して操業を始め、07時18分操業を終えて帰港することとし、勝浦灯台から171度(真方位、以下同じ。)14.2海里の地点を発進し、針路を319度に定め、機関を13.0ノットの全速力前進にかけて自動操舵により進行した。
 A受審人は、操舵室内の舵輪後方に左右に張り渡した板の左舷寄りに腰掛けて見張りをしながら続航していたところ、07時48分勝浦灯台から192度9.4海里の地点において、正船首800メートルのところに船尾マストにスパンカーを展張した茂丸を視認することができ、その後、停留状態の同船に衝突のおそれのある態勢で接近していることを認め得る状況となったが、付近の海域で操業が行われていることはまれであったことから、前路に他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行うことなく、後方から同航する僚船との無線でのやりとりなどに気を取られていて、茂丸に気付かず、同船を避けないまま進行した。
 07時50分わずか前、A受審人は、茂丸に95メートルに近づいたものの、依然、同船に気付かないまま続航中、07時50分勝浦灯台から194度9.1海里の地点で、池田丸は、原針路、原速力のまま、その船首が茂丸の右舷中央部に後方から67度の角度で衝突して同船に乗り上げた。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、視界は良好であった。
 また、茂丸は、FRP製遊漁船で、B受審人が、1人で乗り組み、遊漁客5人を乗せ、あこうだい釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、同日06時00分千葉県小湊漁港を発し、八幡岬南方約9海里沖合の釣場に向かった。
 ところで、B受審人は、釣場に達したところで、機関を一旦中立回転として船尾マストに高さ3メートル底辺2メートルの緑色スパンカーを展張し、その後、遊漁客の釣糸が互いに絡みあわないよう、また、プロペラに巻き込まないように、機関を極微速力後進に短時間かけ、わずかな後進行きあし状態で、船首寄りの遊漁客から順次釣糸を投入させ、最後の遊漁客が投入したのち、機関を微速力前進にかけて各釣糸が垂直となったところで、機関を中立として停留状態で釣りをさせていた。
 B受審人は、06時40分釣場に着き、魚群探知機により水深600メートルの遊漁地点を探索し、一旦停留したものの、船位が遊漁地点から少しずれていたので修正することとし、07時20分各自の釣糸を上げさせて機関を微速力前進にかけ、ゆっくりと右回頭し、07時40分勝浦灯台から194度9.0海里の地点に至ったところで、周囲を確認して機関を極微速力後進にかけ、船首を007度に向け、わずかな後進行きあしを保ちながら、釣糸を投入させた。
 07時48分B受審人は、前示衝突地点に差し掛かったとき、右舷船尾48度800メートルのところに自船に向首し、衝突のおそれのある態勢で接近している池田丸を視認できる状況にあったが、釣糸の投入を指示するころに周囲を一瞥して他の船舶を認めなかったことから、付近に接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかったので同船に気付かなかった。
 B受審人は、07時49分半前示衝突地点を20メートルばかり過ぎたところで、釣糸を垂直にしようと、船首を007度に向けたまま、機関を極微速力前進に短くかけたのち、中立としたものの、依然、池田丸に気付かず、直ちに機関を前進にかけるなど、衝突を避けるための措置をとらなかった。
 B受審人は、船尾が風に落とされて船首を026度に向けたころ、池田丸の機関音に気づき、至近に同船を初めて視認したものの、遊漁客とともに身をかわすほかどうすることもできず、茂丸は、07時50分前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、池田丸は、右舷船首部外板及び右舷船底外板に破口を生じて機関室内に浸水し、茂丸は、操舵室及び機関室囲壁が損壊するとともに、右舷外板に破口を生じて機関室内に浸水したが、僚船によってそれぞれ発航地に引きつけられ、のちいずれも修理され、茂丸の遊漁客1人が両側大腿打撲などを負った。

(原因)
 本件衝突は、千葉県八幡岬南方沖合において、帰港中の池田丸が、見張り不十分で、前路で停留中の茂丸を避けなかったことによって発生したが、茂丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、千葉県八幡岬南方沖合を帰港する場合、前路で停留中の茂丸を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、付近の海域で操業が行われていることはまれであったことから、前路に他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、茂丸の存在に気付かず、停留中の同船を避けることなく進行して衝突を招き、池田丸の右舷船首部外板及び右舷船底外板に破口を、茂丸の操舵室及び機関室囲壁に損壊並びに右舷外板に破口をそれぞれ生じさせるとともに、茂丸の遊漁客1人に両側大腿打撲などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、千葉県八幡岬南方沖合で遊漁を行う場合、接近する池田丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、遊漁客に釣糸の投入を指示するころ周囲を一瞥して他の船舶を認めなかったことから、付近に接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、右舷船尾方から接近する池田丸に気付かず、同船との衝突を避けるための措置をとることなく停留を続けて衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるとともに、自船の遊漁客1人に両側大腿打撲などを負わせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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