(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年12月27日05時25分
平戸瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第11漁協丸 |
引船きく丸 |
総トン数 |
19.72トン |
19トン |
全長 |
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13.35メートル |
登録長 |
16.60メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
150 |
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出力 |
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514キロワット |
船種船名 |
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台船MD−1108 |
総トン数 |
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636トン |
全長 |
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45メートル |
3 事実の経過
第11漁協丸(以下「漁協丸」という。)は、漁獲物運搬に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、鮮魚300キログラムを載せ、船首0.63メートル船尾1.41メートルの喫水をもって、平成12年12月27日05時00分長崎県飯盛漁港を発し、同県田平港に向かった。
05時21分半少し過ぎA受審人は、南風埼灯台から349度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点に達し、法定の航海灯を掲げて針路を179度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で、狭い水道の右側端に寄らないで水道のほぼ中央を手動操舵により進行していたとき、左舷船首6度1,500メートルのところに北上するきく丸の青色回転灯、白灯2個及び緑灯を認め、同船が引船列で、南風埼を付け回しするころ左舷対左舷で無難に航過できるものと思い、その後、きく丸の後方30メートルに引く台船MD−1108(以下「台船」という。)が表示する点滅灯6個を認めることができたが、動静監視を行うことなく、続航した。
05時24分A受審人は、同針路同速力で進行中、左舷船首2度410メートルに南風埼を付け回すきく丸の紅灯を認め、田平港に向かう予定転針地点の約200メートル手前に達し、そのまま進行すれば左舷対左舷で無難にかわる態勢であったが、依然として同船の船尾方に引く台船を確認しないまま、同船との航過を待ってから田平港に向けるつもりで転進の時機を伺っているうち、同船が引船列であることを失念して続航した。
05時25分わずか前A受審人は、きく丸とほぼ左舷正横約20メートルの距離で無難に航過する態勢となったとき、左舷船首約40度に同船後方に引く台船の背景となる田平港の陸上灯火に惑わされたかして台船の存在に気付かず、同船の船尾方に転進しても大丈夫と思い、田平港防波堤の入口に向けようとして台船の前路に転進し、同時25分南風埼灯台から296度160メートルの地点において、漁協丸の船首が台船の左舷船首に前方から約30度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、潮流はほとんどなく、視界は良好であった。
また、きく丸は、鋼製引船で、B受審人ほか1人が乗り組み、船首尾共0.3メートルの喫水となった空船の台船を引き、船首0.8メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、同月26日20時00分長崎港を発し、同県松浦港に向かった。
翌27日04時40分B受審人は、平戸大橋南方3海里の地点に達し、曳航索を約30メートルに短縮して自船船尾端から台船の後端までの長さを78メートルの引船列として、マスト頂部に青色全周回転灯、その下方に白白2灯の航海灯、後部に引船灯及び船尾灯を掲げ、船橋に両舷灯並びに煙突後部の照明灯から法定の灯火設備を有しない台船を照射し、台船両舷の船首尾に白色及び中央部に黄色の点滅灯を計6個表示して進行した。
05時16分B受審人は、南風埼灯台から162度1,250メートルの地点に達し、甲板員を操舵に当たらせて操船指揮をとり、針路を325度に定め、機関を全速力とし、5.0ノットの対地速力で続航した。
05時21分半B受審人は、南風埼灯台から360度420メートルの地点において、右舷船首17度1,500メートルのところに漁協丸の白紅2灯を認め、その動静を監視しながら進行し、同時23分半同船が右舷船首18度640メートルに見えたとき、広瀬東側の水道を通過するつもりで、徐々に右転を開始した。
05時24分半B受審人は、南風埼灯台から270度150メートルの地点において、右転を終えて広瀬灯台と広瀬導流堤灯台のほぼ中間に向ける針路が007度となったとき、左舷船首14度250メートルに漁協丸を認めて、同船と左舷対左舷で無難な態勢で進行し、同時25分わずか前同船と左舷正横付近の約20メートルの距離で航過して、同針路で進行していたところ、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、漁協丸は船首に破口を生じてのち修理され、台船は左舷船首に擦過傷を生じ、漁協丸の甲板員が右上眼瞼切創を負った。
(原因)
本件衝突は、夜間、平戸瀬戸において、南下中の漁協丸が、狭い水道の右側端に寄って航行しなかったばかりか、動静監視不十分で、無難に航過する態勢で北上するきく丸引船列に向けて転進したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人が、夜間、平戸瀬戸を南下中、左舷船首方に無難に航過する態勢で北上するきく丸引船列の灯火を認めた場合、同船の曳航物件の状況を確認できるよう、その動静を監視すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、その後同船が引船列であることを失念して同船航過直後に同船船尾方に転進しても大丈夫と思い、きく丸引船列に対する動静監視を行わなかった職務上の過失により、きく丸を航過した直後に曳航物件の台船に向けて進行して衝突を招き、漁協丸の船首に破口、台船の左舷船首部に擦過傷を生じさせ、漁協丸の甲板員に右上眼瞼切創を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。