日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年神審第107号
件名

漁船平盛丸プレジャーボート一丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年1月18日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正、前久保勝己、小金沢重充)

理事官
加藤昌平

受審人
A 職名:平盛丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士(5トン限定)
B 職名:一丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
平盛丸・・・船首部に擦過傷
一丸・・・左舷中央部外板及び船橋を破損

原因
平盛丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
一丸・・・注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、平盛丸が、見張り不十分で、錨泊中の一丸を避けなかったことによって発生したが、一丸が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。 

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年10月15日14時18分
 高知県宇佐港南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船平盛丸 プレジャーボート一丸
総トン数 4.9トン  
全長   7.00メートル
登録長 9.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 33キロワット 62キロワット

3 事実の経過
 平盛丸は、あまだいはえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成11年10月15日03時00分高知県久礼港を発し、同県高知港南方10海里付近の漁場に至って操業し、5キログラムの漁を得て、13時00分高知灯台から158度(真方位、以下同じ。)8.5海里の地点を発進し、帰途についた。
 発進時、A受審人は、針路を273度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.1ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 A受審人は、発進してまもなく昼食の用意を行い、その後操舵室において食事をとり、13時40分ごろ前方を見回し、他船が見当たらないので、漁具の修理作業を行うこととし、操舵室後部の船尾甲板に行き、左舷側の箱に船尾方を向いて腰掛け、同作業を始めた。
 14時15分A受審人は、白ノ鼻灯台から201度3.5海里の地点に達したとき、ほぼ正船首方750メートルのところに、静止状態にある一丸を視認することができる状況であったが、漁具の修理作業に気を取られ、一丸を見落とさないよう、前方の見張りを十分に行うことなく、同船の存在に気付かないまま西行した。
 A受審人は、その後一丸が錨泊中の形象物を掲げていないものの、折からの風向と静止状況から、船首を南方に向けて錨泊中であることが分かる同船に、衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、右転するなど、一丸を避けることなく続航中、14時18分白ノ鼻灯台から208度3.6海里の地点において、平盛丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、一丸の左舷中央部付近に前方から87度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南寄りの風が吹き、視界は良好であった。
 また、一丸は、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、同日08時30分高知県宇佐港を発し、09時00分前示衝突地点付近に到着した。
 到着時、B受審人は、水深約55メートルのところで機関停止のうえ、船首部から重さ7キログラムの鋼製錨を投じ、長さ80メートル直径10ミリメートルの合成繊維索を延出して錨泊したのち、錨泊中の形象物を掲げないまま、船尾中央部甲板上のさ蓋に船尾方を向いて座り、竿釣りを始めた。
 14時15分B受審人は、船首が180度に向いていたとき、左舷船首87度750メートルのところに、自船に向首接近する平盛丸を視認し、その後同船が避航動作をとらないまま衝突のおそれがある態勢で接近するのを知ったが、そのうちに同船が避けてくれるものと思い、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、間近に接近したとき、機関を使用するなど、衝突を避けるための措置もとらずに見守るうち、同時18分わずか前平盛丸が至近に迫り、ようやく衝突の危険を感じたものの、時既に遅く、一丸は、船首が180度を向いたまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、平盛丸は船首部に擦過傷を、一丸は左舷中央部外板及び船橋に破損並びに船外機に濡れ損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、高知県宇佐港南方沖合において、西行中の平盛丸が、見張り不十分で、錨泊中の一丸を避けなかったことによって発生したが、一丸が、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、高知県宇佐港南方沖合において、漁場から帰航のため西行する場合、前路で錨泊している他船を見落とさないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漁具の修理作業に気を取られ、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、一丸の存在と接近とに気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、自船の船首部に擦過傷を、一丸の左舷中央部外板及び船橋に破損並びに船外機に濡れ損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、高知県宇佐港南方沖合において、錨泊して魚釣りを行っていたとき、平盛丸が避航動作をとらないまま衝突のおそれがある態勢で接近するのを知った場合、機関を使用するなど、衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、そのうちに同船が避けてくれるものと思い、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、そのまま錨泊を続けて平盛丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:22KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION