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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年神審第71号
件名

貨物船第拾壱 三石丸護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年1月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第拾壱三石丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
三石丸・・・船首下部外板に破口、護岸基部のブロックに破損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件護岸衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条
 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月5日18時00分
 明石海峡北岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第拾壱 三石丸
総トン数 493トン
登録長 62.42メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第拾壱 三石丸(以下「三石丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、砂1,500トンを載せ、船首3.8メートル船尾4.9メートルの喫水をもって、平成12年9月5日04時45分山口県徳山下松港を発し、大阪港に向かった。
 ところで、船橋当直は、05時から09時までと17時から21時までをA受審人、09時から13時までと21時から01時までを二等航海士、01時から05時までと13時から17時までを一等航海士がそれぞれ担当する単独3直輪番制をとっていた。
 16時55分A受審人は、昇橋して船橋当直に就き、淡路室津港西防波堤灯台から295度(真方位、以下同じ。)4.1海里の地点において、針路を明石海峡西口に向かう068度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの順流に乗じて11.2ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で自動操舵とし、操舵室中央部の操舵輪の後方で、背もたれの付いたいすに座り見張りに当たりながら進行した。
 A受審人は、17時30分ごろ眠気を感じるようになったが、もうすぐ明石海峡に進入するのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航とならないよう、操舵室から外へ出て外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、同時40分江埼灯台から271度1.6海里の地点で、自動操舵のまま063度の針路に転じ、明石海峡の東流による右方への圧流を調整したのちも、いすに座ったまま当直に当たった。
 こうして、三石丸は、A受審人がやがて居眠りに陥り、明石海峡西口に差し掛かったころから東流を受けて右方に圧流され始め、明石海峡航路中央第2号灯浮標付近で12.5ノットの速力となり、同航路を斜航したまま同海峡北岸に向首接近し、18時00分江埼灯台から053度2.4海里の海岸にある護岸に、原針路のまま、11.9ノットの速力で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の北寄りの風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、衝突地点付近には0.9ノットの東流があった。
 衝突の結果、船首下部外板に破口を伴う凹傷を生じてバウスラスタルームに浸水し、また、護岸基部のブロックに破損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件護岸衝突は、明石海峡西口に向けて北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同海峡北岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、明石海峡西口に向けて北上中、いすに座り見張りに当たっていたとき、眠気を感じた場合、居眠り運航とならないよう、操舵室から外へ出て外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、もうすぐ明石海峡に進入するのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、明石海峡北岸に向首進行して護岸との衝突を招き、船首下部外板に破口を伴う凹傷を生じてバウスラスタルームに浸水させ、また、護岸基部のブロックに破損を生じさせるに至った。





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