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平成13年神審第52号
件名

漁船望美丸貨物船サウザン スプレンダー衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年1月15日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西田克史)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:望美丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
望美丸・・・船首部を圧壊
サ号・・・右舷船首部外板に擦過傷

原因
サ号・・・見張り不十分、横切の航法(避航動作)不遵守(主因)
望美丸・・・動静監視不十分、警告信号不履行、横切の航法(協力動作)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、サウザン スプレンダーが、見張り不十分で、前路を左方に横切る望美丸の進路を避けなかったことによって発生したが、望美丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。 

適条
 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月16日10時30分
 高知県室戸岬南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船望美丸 貨物船サウザン スプレンダー
総トン数 9.97トン 2,849トン
全長   96.88メートル
登録長 13.90メートル  
機関の種類 ディーゼル 機関ディーゼル機関
出力 257キロワット 1,618キロワット

3 事実の経過
 望美丸は、船体中央部に操舵室を備えたFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、立縄釣り漁の目的で、船首0.4メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成12年6月16日02時00分高知県室戸岬漁港を発し、室戸岬南東方14海里付近の漁場に至り、きんめだい100キログラムを獲て操業を終え、09時30分同漁場を発進して帰途に就いた。
 A受審人は、室戸岬に向けて北上し、09時50分室戸岬灯台から143度(真方位、以下同じ。)10.8海里の地点で、針路を320度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分1,350にかけ、7.5ノットの対地速力で進行した。
 10時21分半A受審人は、室戸岬灯台から144度6.9海里の地点に達したとき、左舷船首47度2.0海里のところに、前路を右方に横切る態勢のサウザン スプレンダー(以下「サ号」という。)を初めて視認したが、一べつしただけでサ号が自船の船尾方を替わるものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、サ号の動静監視を十分に行うことなく、間もなく船尾甲板に赴き漁具の修理に取り掛かった。
 こうして、A受審人は、その後サ号が衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき、行きあしを停止するなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航中、10時30分わずか前波きりの音を聞き、周囲を見渡し船首至近にサ号を認め、急ぎ機関を中立としたが効なく、10時30分室戸岬灯台から145度5.8海里の地点において、望美丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、サ号の右舷船首部に前方から74度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、視界は良好であった。
 また、サ号は、船尾船橋型貨物船で、船長Bほか12人が乗り組み、川砂4,470.2トンを積載し、船首5.2メートル船尾5.7メートルの喫水をもって、同月12日中華人民共和国福州港を発し、千葉港に向かった。
 B船長は、越えて16日08時00分土佐湾沖合で、操舵手を伴って航海当直に就き、針路を062度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分220にかけ、10.5ノットの対地速力で進行した。
 10時21分半B船長は、室戸岬灯台から160度5.8海里の地点に達したとき、右舷船首31度2.0海里のところに、北上する望美丸を視認できる状況であったが、前部甲板上のデリックのガイ配置替え作業中の乗組員を見守っていて、十分な見張りを行わなかったので、同船の存在に気付かなかった。
 こうして、B船長は、その後望美丸が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、速やかに右転するなど同船の進路を避けないで続航中、10時30分少し前右舷至近に望美丸を初めて視認し、右舵一杯としたが及ばず、サ号は、066度に向首したとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、望美丸は、船首部を圧壊し、サ号は、右舷船首部外板に擦過傷を生じた。

(原因)
 本件衝突は、室戸岬南東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、東行中のサ号が、見張り不十分で、前路を左方に横切る望美丸の進路を避けなかったことによって発生したが、北上中の望美丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、室戸岬南東方沖合を北上中、前路を右方に横切る態勢のサ号を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一べつしただけでサ号が自船の船尾方を替わるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、サ号が衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき、行きあしを停止するなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して同船との衝突を招き、自船の船首部を圧壊させ、サ号の右舷船首部外板に擦過傷を生じさせるに至った。 


参考図
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