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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第44号
件名

旅客船孔雀丸漁船ヒマワリ丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年1月18日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:孔雀丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
孔雀丸・・・損傷ない
ヒマワリ丸・・・操縦席風防覆いを大破等

原因
風圧に対する配慮不十分

裁決主文

 本件衝突は、離桟する孔雀丸が、風圧に対する配慮が不十分で、ヒマワリ丸が係留中の桟橋を十分に離す措置をとらなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条
 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月4日11時15分
 塩釜港塩釜区第1区

2 船舶の要目
船種船名 旅客船孔雀丸 漁船ヒマワリ丸
総トン数 371.51トン 2.2トン
全長 33.50メートル  
登録長   8.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 404キロワット  
漁船法馬力数   60

3 事実の経過
 孔雀丸は、塩釜港と宮城県松島港間の運航に従事する、バウスラスターを装備した船首船橋型の鋼製旅客船で、A受審人ほか4人が乗り組み、回航の目的で、船首1.2メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成12年12月4日11時12分塩釜港塩釜区第1区の観光桟橋を出船右舷付けの態勢から発し、松島港に向かった。
 A受審人は、船首に甲板員1人を、船尾に機関長及び甲板員1人をそれぞれ配置し、自らは船橋内前部中央で操舵操船に当たり、右舷側スプリング及び機関を使用して船尾を左舷側に振ったのち、11時13分塩釜港導灯(前灯)(以下「導灯」という。)から095度(真方位、以下同じ。)380メートルの地点において、船首が109度に向首したとき、機関を微速力後進にかけ、後退した。
 ところで、孔雀丸は、甲板を三層有していて、上甲板及びその上の第一甲板は、船首から船尾にかけての4分の3が客室となっており、更にその上の第二甲板は、船首から船体中央部にかけてが客室で船体中央部から船尾にかけてはオーニングが展張されていて、喫水と比較して上部が非常に高い構造となっており、受風面積の大きい船体の船舶であった。
 A受審人は、着桟位置から70メートルばかり後退したのち左回頭して港外に向かう予定でいたところ、11時13分半同位置から30メートル離れ、導灯から094度350メートルの地点に達したとき、観光桟橋西方奥から出航してくる旅客船を認め、同船を先航させるつもりで機関を停止した。
 A受審人は、11時13分半わずか過ぎ前示旅客船が安全に替わる状況となったとき、折からのやや強い北西風により風下の観光桟橋側に圧流されるおそれがあったが、このまま回頭できると思い、予定した安全に回頭できる水域まで後退するなど風圧に対する配慮を十分に行うことなく、機関を微速力前進にかけ、左舵一杯として左回頭を開始した。
 A受審人は、11時14分導灯から092度400メートルの地点に達して船首が066度に向いたとき、圧流されて観光桟橋に接近しているのを認め、機関を全速力後進としてバウスラスターを左回頭一杯としたが及ばず、11時15分導灯から094度410メートルの地点において、孔雀丸は、074度に向首したとき、ほぼ行きあしがないまま、その右舷船首部が同桟橋に無人の状態で左舷付け係留されていたヒマワリ丸の右舷後部に平行に衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 また、ヒマワリ丸は、採介藻漁業に従事するFRP製漁船で、船長Uが1人で乗り組み、あさり及びなまこ行商のため、同日09時10分宮城県桂島漁港を出航して、同時30分観光桟橋に着桟し、無人の状態で同桟橋に左舷付け係留していたところ、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、孔雀丸は損傷がなく、ヒマワリ丸は操縦席風防覆いを大破し、左舷後部上甲板とブルワークの取り合い部に亀裂等を生じた。

(原因)
 本件衝突は、やや強めの北西風が吹く塩釜港塩釜区において、喫水と比較して上部の受風面積が大きい船体を有する孔雀丸が、同区第1区の観光桟橋を離桟する際、風圧に対する配慮が不十分で、ヒマワリ丸が係留中の同桟橋を十分離す措置をとらなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、やや強めの北西風が吹く塩釜港塩釜区において、喫水と比較して上部の受風面積が大きい船体を有する孔雀丸を操船して、同区第1区の観光桟橋から後退したのち左回頭して離桟する場合、風下の同桟橋側に圧流されるおそれがあったから、予定した安全に回頭できる水域まで後退するなど風圧に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、このまま回頭できると思い、安全に回頭できる水域まで後退するなど風圧に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、風下に圧流されて同桟橋に係留しているヒマワリ丸との衝突を招き、ヒマワリ丸の操縦席風防覆いを大破させ、左舷後部上甲板とブルワークの取り合い部に亀裂等を生じさせるに至った。


参考図
(拡大画面:22KB)





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