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平成13年仙審第27号
件名

漁船第五十八太幸丸機関損傷事件

事件区分
機関損傷事件
言渡年月日
平成13年10月12日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(大山繁樹、東 晴二、喜多 保)

理事官
岸 良彬

受審人
A 職名:第五十八太幸丸機関長 海技免状:四級海技士(機関)(機関限定)

損害
1、3、4、5番シリンダの連接棒及び弾性ゴム継手亀裂

原因
主機据付用チョックライナの取付状態の点検不十分

主文

 本件機関損傷は、主機据付け用チョックライナの取付け状態の点検が不十分で、クランク軸の軸心が偏移したまま運転されたことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月10日09時30分
 岩手県大槌港内の造船所

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十八太幸丸
総トン数 144トン
登録長 32.00メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 1,029キロワット
回転数毎分 800

3 事実の経過
 第五十八太幸丸(以下「太幸丸」という。)は、昭和63年3月に進水したかじき等流し網漁業に従事する鋼製漁船で、主機として、ヤンマーディーゼル株式会社が同年2月に製造したT240−ET2型と称するディーゼル機関を装備し、主機の各シリンダには船首側を1番として順番号を付しており、主機の動力伝達装置には弾性ゴム継手を介して逆転減速機を備え、また、主機船首側の動力取出軸により増速機を介して甲板ウィンチ用油圧ポンプを駆動していた。
 主機の主軸受組立構造は、軸受キャップを台板隔壁の主軸受ハウジングに被せ、両側各1本の締付けボルトに袋ナット形状の締付けナットを締め込んで固定し、同ナットの回り止め措置として、回り止めボルトが同ナットの頭部を貫通して締付けボルト頭部に取り付けられており、締付けボルトは、全長284ミリメートル(以下「ミリ」という。)ねじの呼びM30で、回り止めボルトは、ねじの呼びM14であった。また、軸受キャップと主軸受ハウジングとの合わせ面にはセレーション加工が施されていた。
 主機の台板は、機関台に両舷とも全長260ミリねじの呼びM33×2の両ねじボルトである据付けボルト7本で取り付けられ、各ボルト取付け部にあたる台板と機関台との間には、チョックライナが挿入されていた。
 ところで、チョックライナは、厚さ55ミリ幅115ミリ奥行き125ミリのフートライナと称する鋳鉄(材料記号FC20)製のものを、グラインダなどで勾配をつけて楔形にして台板と機関台との間に装着するもので、チョックライナの形状は、新造時、1番と7番とが据付けボルト穴を円型にくり抜いてあり、その他が同ボルト穴をU字状にくり抜いた馬蹄形をしていたが、馬蹄形の方が押し込んだり、引き出したりして容易にクランク軸の軸心を修正することができるためか、いつしか全チョックライナに馬蹄形のものが使用されていた。
 A受審人は、平成11年12月10日太幸丸に機関長として乗り組み、かじき等流し網漁業に従事し、機関部員3人を指揮して機関の運転保守管理に当たり、主機の回転数の上限を毎分790として取り扱っていたところ、主機台板の右舷側1、4及び7番の据付けボルトが運転に伴う機関振動等の影響で締付け力が低下して緩み、当該チョックライナが相次いで脱落したが、同ライナが床下部分にあったことから、同ライナの取付け状態を点検しなかったので、このことに気付かなかった。
 その後主機は、運転中台板がたわみ、クランク軸の軸心が著しく偏移した状態で運転が続けられたことから、各部に過大な衝撃力が繰り返し作用し、1、7番両主軸受のハウジング部及びセレーション部が摩耗し始めるとともに、弾性ゴム継手に微細な亀裂を、クランクピン軸受が叩かれて1、3、4、5番シリンダの連接棒大端の軸受部に摩耗をそれぞれ生じたが、主機の運転状態に格別変化がなかったので、そのまま運転が続けられているうち、7番主軸受の左舷側締付けボルトに過大な引張力が作用したことにより回り止めボルトが切断して締付けナットが緩み、ハウジング部及びセレーション部の摩耗が一層進行し、また、弾性ゴム継手の亀裂及び連接棒大端の軸受部の摩耗も進行する状況となった。
 越えて翌12年4月3日太幸丸は、所定の操業を切り上げたのち、A受審人ほか6人が乗り組み、定期検査工事の目的で、船首2.00メートル船尾2.50メートルの喫水をもって、翌4日14時30分千葉県銚子港を発し、翌々5日09時00分岩手県大槌港に入港して、同港内の造船所に上架された。
 こうして太幸丸は、船体及び機関の整備が行われていたところ、同月10日09時30分大槌港灯台から真方位020度500メートルの地点の造船所構内において、地元鉄工所が弾性ゴム継手の亀裂及びチョックライナの脱落を発見した。
 当時、天候は晴で風力1の南西風が吹いていた。
 同鉄工所は、ほかに不具合箇所が懸念されたことから、主機製造会社系列の整備会社に調査を依頼し、同整備会社は、弾性ゴム継手の損傷状況が激しかったので台板、架構、クランク軸等を工場に陸送して精査したところ、前示損傷を認め、のち1、7番主軸受のハウジング及び軸受キャップを修正及び摺り合わせ修理し、1、3、4、5番シリンダの連接棒及び弾性ゴム継手を新替え修理した。

(原因)
 本件機関損傷は、主機据付け用チョックライナの取付け状態の点検が不十分で、同ライナの脱落によりクランク軸の軸心が著しく偏移したまま運転され、主軸受等に過大な衝撃力が作用したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、主機の運転保守管理に当たる場合、主機据付け用チョックライナが据付けボルトの締付け力低下などで自然に抜け出すことがあるから、同ライナの取付け状態を十分に点検すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同ライナが床下部分にあったことから、同ライナの取付け状態を十分に点検しなかった職務上の過失により、同ライナが脱落していることに気付かず、クランク軸の軸心が著しく偏移したまま運転を続け、主軸受のハウジング及び軸受キャップと、連接棒大端の軸受部とに異常摩耗、弾性ゴム継手に亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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