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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成13年神審第65号
件名

プレジャーボート第二吉丸転覆事件

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成13年12月6日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、大本直宏、内山欽郎)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:第二吉丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
消波ブロックに打ちつけられて大破し、全損

原因
復原性に対する配慮不十分

主文

 本件転覆は、復原性に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月22日07時30分
 石川県松任市沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート第二吉丸
全長 4.68メートル
1.27メートル
深さ 0.53メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 第二吉丸(以下「吉丸」という。)は、船外機装備の無甲板型FRP製プレジャーボートで、特に復原性に関連する開口部及び移動物のない状況下、魚釣りの目的で、A受審人が単独で乗り組み、友人2人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、平成12年4月22日06時30分石川県松任市相川新町の砂浜を発し、同市沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、松任市沖合数百メートルの釣り場に至り、時々移動して漂泊しながら約1時間釣りを行ったが釣果もなく、次第に南西からの風波が強くなってきたので、釣りを切り上げて帰航することとした。
 07時27分A受審人は、右舷船尾甲板に座り、左手で舵を持って操船に当たり、美川灯台北東方4.0海里の3.5メートル三角点(以下「三角点」という。)から251度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点を発進すると同時に、針路を海岸に沿う035度に定め、機関を半速力前進にかけ、6.0ノットの対地速力で進行した。
 間もなく、A受審人は、次第に左舷後方からの波浪が強まってくる状況で航行したが、大きく横揺れすることはないと思い、下を向いて釣り道具を片付け始めた同乗者が舷側に片寄ると、船の安定性を損なうから、片舷への急激な荷重増加とならないよう、同乗者に舷縁をつかませるなど、復原性に対する配慮を十分に行うことなく、原針路原速力で続航した。
 こうして、吉丸は、07時30分わずか前左舷後方から一段と高起した波浪を受けて右舷方に傾いたとき、同乗者2人が右舷側へ転倒し、07時30分三角点から267度1,200メートルの地点において、右舷への急激な荷重増加により大傾斜し、復原力を喪失して転覆した。
 当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、波高0.5メートルの波浪があり、潮候は下げ潮の中央期であった。
 転覆の結果、吉丸は、その後消波ブロックに打ちつけられて大破し、全損となった。一方、乗船者は、転覆と同時に全員が海中に投げ出されたが、吉丸の船底にはい上がって漂流中、巡視艇に救助された。

(原因)
 本件転覆は、石川県松任市沖合において、波浪が強まってくる状況で発航地へ向け帰航する際、復原性に対する配慮が不十分で、左舷後方から一段と高起した波浪を受けて右舷方に傾いたとき、同乗者が右舷側へ転倒し、同舷への急激な荷重増加により大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、石川県松任市沖合において、波浪が強まってくる状況で発航地へ向け帰航する場合、同乗者が舷側に片寄ると、船の安定性を損なうから、片舷への急激な荷重増加とならないよう、同乗者に舷縁をつかませるなど、復原性について十分配慮すべき注意義務があった。しかるに、同人は、大きく横揺れすることはないと思い、復原性について十分配慮しなかった職務上の過失により、左舷後方から一段と高起した波浪を受けて右舷方に傾いたとき、同乗者が右舷側へ転倒し、同舷への急激な荷重増加により大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、のち吉丸を消波ブロックに打ちつけて大破させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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