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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第51号
件名

漁船祥陽丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月18日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(河本和夫、平田照彦、亀井龍雄)

理事官
弓田

受審人
A 職名:祥陽丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
球状船首部に亀裂を伴う擦過傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月24日16時30分
 長崎県五島列島中通島小串漁港

2 船舶の要目
船種船名 漁船祥陽丸
総トン数 19トン
登録長 19.02メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 603キロワット

3 事実の経過
 祥陽丸は、中型まき網漁業の漁獲物運搬に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.3メートルの喫水で、平成12年9月24日14時00分船団の僚船とともに長崎県神崎漁港を発し、平戸島西南西方約5海里の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、昼頃出港して夜間操業を行い、翌朝帰港して水揚げ後に休息することを繰り返していたが、前日は休漁日で十分に睡眠をとっていた。
 14時18分A受審人は、下枯木島灯台から015度(真方位、以下同じ。)620メートルの地点において、針路を248度に定め、舵輪後方のいすに腰掛けて足を舵輪前方の計器台の上に乗せ、自動操舵として10.3ノットの対地速力で進行した。
 15時11分A受審人は、尾上島灯台から168度1.6海里の地点において、針路を漁場に向く243度に定針してまもなく、海上は平穏で慣れた航路であったうえ付近に他船もいなかったことから気が緩んで眠気を催したが、居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって手動操舵とするなど居眠り運航の防止措置を十分にとることなく、同じ姿勢でいるうちいつしか居眠りに陥った。
 こうして祥陽丸は、同速力、同針路で進行し、16時30分矢堅目埼灯台から076度1.6海里の小串漁港護岸消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、海上は穏やかで、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、乗揚の衝撃で目が覚めて事後の措置にあたった。
 乗揚の結果、祥陽丸は、球状船首部に亀裂を伴う擦過傷、シューピースに曲損、推進器翼に曲損及び欠損、推進軸に曲損をそれぞれ生じたが、自力で離礁したうえ低速力で帰港し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、平戸島西南西方沖合の漁場に向けて航行中、眠気を催した際、居眠り運航の防止措置が不十分で、小串漁港護岸消波ブロックに向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で乗り組んで平戸島西南西方沖合の漁場に向けて航行中、眠気を催した場合、居眠りに陥ることのないよう、いすから立ち上がって手動操舵で操船するなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、小串漁港護岸消波ブロックに向首したまま進行して乗揚を招き、球状船首部に亀裂を伴う擦過傷、シューピースに曲損、推進器翼に曲損及び欠損、推進軸に曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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