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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年那審第29号
件名

漁船美紀丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月17日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:美紀丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に破口し、浸水、のち廃船

原因
錨泊・係留の不適切

主文

 本件乗揚は、守錨当直を配置しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年2月1日04時30分
 鹿児島県与路島北西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船美紀丸
総トン数 8.5トン
登録長 13.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 美紀丸は、潜水器漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成13年1月31日15時00分沖縄県牧港漁港を発し、鹿児島県与路島に向かった。
 A受審人は、南寄りの風が強まってきたので、与路島北西方で操業することとし、船橋当直を6人全員が2時間交替で行って航行した。
 翌2月1日02時30分A受審人は、与路島大勝山297メートル頂から357度(真方位、以下同じ。)2.2海里の地点において、重量30キログラムの五爪錨に直径14ミリメートルのナイロン製ロープを65メートル延出して錨泊した。
 錨泊地点付近は、水深約40メートル底質がさんごで、同地点から与路島北西方のさんご礁外縁まで600メートルであった。
 A受審人は、錨泊中に風向が北寄りに変わったら与路島南東方沖に移動することにし、投錨したとき風力5の南寄りの風が吹いており、うねりもあったが、この程度の風なら走錨することはあるまいと思い、守錨当直を配置することなく、乗組員を船員室で休息させ、自らは操舵室で休息した。
 美紀丸は、いつしか走錨し、北寄りに変わった風によって、与路島北西方のさんご礁外縁に向けて圧流され、04時30分与路島大勝山297メートル頂から002度2.0海里の地点において、039度に向いて乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力5の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底に破口を生じて浸水し、推進器翼、同軸及び舵に曲損を生じ、のち廃船となった。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、やや強い南寄りの風が吹いている状況のもと、鹿児島県与路島北西方沖において、操業開始まで休息するため錨泊した際、守錨当直を配置せず、走錨して北寄りに変わった風により風下のさんご礁外縁に圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、やや強い南寄りの風が吹いている状況のもと、鹿児島県与路島北西方沖において、操業開始まで休息するため錨泊した場合、守錨当直を配置すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、この程度の風なら走錨することはあるまいと思い、守錨当直を配置しなかった職務上の過失により、走錨せしめて北寄りに変わった風により風下のさんご礁外縁に圧流されて乗揚を招き、船底に破口を、推進器翼、同軸及び舵に曲損をそれぞれ生じさせ、のち廃船に至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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