(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年12月27日08時30分
沖縄県船浦港外
2 船舶の要目
船種船名 |
引船第三初丸 |
台船丸前1号 |
総トン数 |
13トン |
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登録長 |
11.95メートル |
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長さ |
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46.00メートル |
幅 |
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14.00メートル |
深さ |
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3.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
410キロワット |
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3 事実の経過
第三初丸(以下「初丸」という。)は、2基2軸の鋼製の引船で、A指定海難関係人が船長として、ほか2人が乗り組み、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水で、路盤材1,200トンばかりを載せて船首1.2メートル船尾3.0メートルの喫水となった台船丸前1号(以下「丸前」という。)を船尾に引き、引船列を構成し、平成12年12月26日08時15分沖縄県長山港を発し、同県船浦港船浦地区に向かった。
ところで、B指定海難関係人は、A指定海難関係人が一級小型船舶操縦士免許の学科試験に合格して実技試験も終えていたものの、免状の交付を受けていないことを知っていたが、同指定海難関係人に初丸の運航を任せることとして、有資格者を乗り組ませなかった。
一方、A指定海難関係人は、三級海技士(機関)内燃機関(旧就業範囲)の海技免許を有し、長年漁労長としてまぐろ漁に従事していた。そして、小型まぐろ漁船の船長職を執るため、一級小型船舶操縦士免許取得試験を受験し、学科試験に合格して実技試験も終えていたものの、免状の交付を受けないまま、B指定海難関係人に請われて初丸の船長として乗船し、船浦港船浦地区まで運航することとした。
こうして、A指定海難関係人は、長山港を出港したが、船浦港船浦地区に初めて入港するにあたり、甲板員が西表島出身なので、危険があれば助言してもらえるものと思い、備え付けの海図第1288号にあたるなどして、船浦港北口付近の水路調査を行わなかった。
A指定海難関係人は、翌27日05時30分鳩間島の東方6.0海里ばかりの地点で昇橋し、単独で船橋当直に就き、2.7ノットの対地速力で手動操舵により鳩間水道を西行し、08時00分ごろ鳩間島の南方1.6海里ばかりの地点に至り、曳航索を30メートルに短縮して甲板員を見張りに配し、同時14分半鳩間島灯台から179度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点で、船浦港北口第1号立標(以下、立標名については「船浦港北口」の冠称を省略する。)に向けて針路を155度に定め、同じ速力で進行した。
そして、A指定海難関係人は、08時25分鳩間島灯台から174度2.0海里の地点に達したとき、第3号立標を左舷船首に見るよう針路を188度に転じ、1号立標の西方250メートルばかりの所に存在する浅礁に向首することとなったが、付近の水路調査を行っていなかったのでこのことに気付かないまま南下した。
初丸引船列は、同じ針路及び速力で続航中、08時30分鳩間島灯台から175度2.2海里の浅礁に丸前が乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力4の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、丸前は、船底に破口を生じ、のち、救助船により船浦港上原地区に引き付けられて解撤された。
(原因)
本件乗揚は、船浦港船浦地区に初めて入港する際、有資格者が乗り組んでいなかったばかりか、水路調査が不十分で、同港北口水路内に存在する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
船舶所有者が、有資格者を乗り組ませなかったことは、本件発生の原因となる。
(指定海難関係人の所為)
A指定海難関係人が、船浦港船浦地区に初めて入港する際、無資格のまま船長として乗り組み、水路調査を行わなかったことは、本件発生の原因となる。
A指定海難関係人に対しては、勧告しない。
B指定海難関係人が、有資格者を乗り組ませなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、勧告しない。
よって主文のとおり裁決する。