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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年門審第71号
件名

貨物船第八昇辰丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月11日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(佐和 明、米原健一、島 友二郎)

理事官
畑中美秀

受審人
A 職名:第八昇辰丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船底外板全般にわたって凹損

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年4月27日02時36分
 豊後水道高甲岩東方鱶(ふか)瀬

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八昇辰丸
総トン数 499トン
全長 75.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第八昇辰丸(以下「昇辰丸」という。)は、宮崎県細島港でニッケル鉱を、または鹿児島県加治木港で金鉱石を積荷し、愛媛県西条市の住友金属鉱山岸壁(以下「住友金属岸壁」という。)または山口県徳山下松港で揚荷する航海に従事する、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.30メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、平成11年4月26日18時20分住友金属岸壁を発し、細島港へ向かった。
 A受審人は、船橋当直を同人、一等航海士及び甲板員による3時間交替の単独三直制とし、出航操船を終えたのち、18時50分船橋当直を一等航海士に委ねて降橋し、自室で休息をとった。
 翌27日00時00分A受審人は、佐田岬灯台の北東方19海里ばかりの地点で昇橋し、甲板員と交替して船橋当直に当たり、01時30分同灯台から258度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点に達したとき、針路を鶴御埼灯台の少し沖合に向く168度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて12.5ノットの対地速力で進行した。
 定針後A受審人は、折からの北西流により、右方に圧流されながら172.5度の実航針路で続航し、02時20分高甲岩灯台から356.5度3.3海里の地点に至ったとき、予定針路線から0.8海里ばかり右偏し、同灯台東方沖合約500メートルに存在する鱶瀬に著しく接近する状況となっていたが、通り慣れた海域であることに気を許し、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行わなかったのでこのことに気付かないで進行中、02時36分高甲岩灯台から089度500メートルの鱶瀬に原針路、原速力のまま乗り揚げ、これを乗り切った。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、速吸瀬戸には約1.4ノットの北流があった。
 乗揚の結果、船底外板全般にわたって凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、豊後水道の高甲岩沖合を南下中、船位の確認が不十分で、潮流により右方に圧流され、鱶瀬に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、豊後水道の高甲岩沖合を南下する場合、同岩東方に存在する鱶瀬に著しく接近することのないよう、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、通り慣れた海域であることに気を許し、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、左舷船首方向からの潮流を受けて徐々に右方に圧流され、鱶瀬に著しく接近していることに気付かないまま進行し、同瀬に乗り揚げ、これを乗り切って船底部外板全般にわたって凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同受審人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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