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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第34号
件名

貨物船龍勢丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、阿部能正、内山欽郎)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:龍勢丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船首船底外板に破口

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月18日17時40分
 香川県小豆島福田漁港東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船龍勢丸
総トン数 498トン
全長 62.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 龍勢丸は、主に土砂運搬に従事する船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、土砂1,345トンを載せ、船首3.7メートル船尾4.9メートルの喫水をもって、平成12年7月18日17時30分香川県小豆島福田漁港南東方0.7海里の土砂積み地を発し、兵庫県家島港へ向かった。
 発航に先立ち、A受審人は、沖合に見えていた小磯灯標と干出岩(ひんでいわ)南灯浮標との間に暗岩が存在することは知っていたものの、土砂積み地で錨泊していたとき、同地を発して小磯灯標の南側を航行する土砂運搬船を見かけたので、同灯標とその南方の干出岩南灯浮標との間を初めて航行することとしたが、小磯灯標の南側を航行しても大丈夫と思い、暗岩に乗り揚げないよう、備えてある海図第150号B及び第1113号で暗岩の位置を精査するなど、水路調査を十分に行わなかった。
 こうして、A受審人は、自ら操舵操船に当たり、17時35分小磯灯標から226度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点で、針路を同灯標と干出岩南灯浮標との間のほぼ中央に向かう057度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で手動操舵により進行中、暗岩であるマナイタ岩に向首する状況となったことに気付かず、17時40分小磯灯標から211度1,250メートルの地点において、龍勢丸は、原針路原速力のままマナイタ岩に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船首船底外板に破口を伴う損傷を生じたが、上げ潮を待って離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県家島港へ向け香川県小豆島の土砂積み地を発航するにあたり、水路調査が不十分で、同島福田漁港東方沖合の暗岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県家島港へ向け香川県小豆島の土砂積み地を発航するにあたり、小磯灯標とその南方の干出岩南灯浮標との間を初めて航行することとした場合、暗岩に乗り揚げないよう、備えてある海図第150号B及び第1113号で暗岩の位置を精査するなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、小磯灯標の南側を航行する土砂運搬船を見かけたので、小磯灯標の南側を航行しても大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、暗岩であるマナイタ岩に向首進行して乗揚を招き、船首船底外板に破口を伴う損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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