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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第49号
件名

貨物船豊洋丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月10日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:豊洋丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船底外板に破口を伴う凹損、浸水

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月15日17時30分
 兵庫県男鹿島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船豊洋丸
総トン数 498トン
全長 65.64メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 豊洋丸は、船尾船橋型の鋼製砂利運搬船兼貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、石材1,800トンを積載し、船首3.60メートル船尾5.40メートルの喫水をもって、回航の目的で、平成13年3月15日17時25分兵庫県男鹿島東岸の採石場を発し、同県家島北東方沖合の錨地に向かった。
 ところで、A受審人は、男鹿島西岸の採石場などで石材の荷積みを行った経験は豊富にあった反面、同島東岸での荷積みは初めてで、同島の東方沖合には、水上岩の大碇礁と干出岩の小碇礁とが存在していることを知っていたものの、その正確な位置を把握していなかった。
 発航するにあたり、A受審人は、男鹿島の西側を通航して錨地に向かう予定でいたところ、先に出航した僚船が同島の東側を北上するのを認め、航程短縮になるので、男鹿島東方沖合を北上することとしたが、先航した僚船と同じように航行すれば大丈夫と思い、小碇礁に乗り揚げないよう、所有していた海図第150号Bを参照して同礁の位置を精査し、避険線を設定しておくなど、水路調査を十分に行わなかった。
 A受審人は、レーダーを停止したまま1人で操舵と見張りに当たり、東方に向け沖出ししたのち、17時28分少し過ぎ男鹿島灯台から068度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点において、針路を018度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力とし、手動操舵により進行した。
 こうして、豊洋丸は、A受審人が小碇礁に向首していることに気付かずに続航中、17時30分男鹿島灯台から053度1,300メートルの小碇礁に、原針路原速力のまま、乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底外板に破口を伴う凹損を生じて浸水したが、自力離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県男鹿島東方沖合を錨地に向け北上するにあたり、水路調査が不十分で、同島東方の小碇礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県男鹿島東方沖合を錨地に向け北上する場合、同島東方沖合の小碇礁の存在を知っていたものの、その正確な位置を把握していなかったのであるから、同礁に乗り揚げないよう、所有していた海図第150号Bを参照して同礁の位置を精査し、避険線を設定しておくなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、先航した僚船と同じように航行すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、小碇礁に向首していることに気付かないまま進行して同礁に乗り揚げ、船底外板に破口を伴う凹損を生じて浸水させるに至った。





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