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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年横審第67号
件名

プレジャーボートマーヤ2乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年12月18日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士)

理事官
酒井直樹

受審人
A 職名:マーヤ2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷機ドライブユニットの中間軸折損等

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月5日11時47分
 茨城県日立港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマーヤ2
総トン数 6.5トン
登録長 8.15メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 220キロワット

3 事実の経過
 マーヤ2は、船内外機を装備した2基2軸、最大搭載人員12人のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、家族4人を乗せ、茨城県北部の港湾巡航の目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年5月5日10時00分同県那珂湊港の那珂湊マリーナを発し、いったん南下して同県大洗港に向かい、同港の沖防波堤を一周したのち北上して同県常陸那珂港に向かい、同港の東防波堤西側をそれに沿って北上を続け、錨泊して昼食を取る予定であった同県日立港に向かった。
 ところで、日立港は、同港北部にある久慈漁港を囲っている北防波堤、同漁港から日立港南部の第5ふ頭に至るまでの陸岸、第5ふ頭の東端から東北東方に約450メートル伸びる南防波堤及び同港中央部に築造された、屈曲部があるもののほぼ南北に伸びる全長約2,000メートルの東防波堤によって囲まれた水域を有し、その水域の南側には南防波堤東端と東防波堤南部との間で幅約270メートルの水路、北側には東防波堤北端と北防波堤南部との間で幅約100メートルの水路があって、それぞれ同水域の出入口となっていた。そして、北側の出入口(以下「北口」という。)の東北東方約300メートルの、日立港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から065度(真方位、以下同じ。)430メートルのところに干出0.2メートルの干出岩を含む険礁であるトゲ磯があり、その周辺には東西にそれぞれ150メートルばかり、南北にそれぞれ100メートルばかりの範囲に水深1.0メートル未満の浅所が点在していた。
 A受審人は、発航前、巡航計画立案などのために用意していた海図第1097号を見たが、これまで4回ばかり日立港を訪れ、北口から出航した経験が2回あり、その際、北口東北東方沖合に白波が生じていることを知ったものの、白波を避けて出航できたことから、北口から出航するときには、白波を避けて出航すれば大丈夫と思い、同港の港内図である海図第1048号を用意して、トゲ磯とその周辺に点在する浅所の位置を確認するなど、水路調査を十分に行っていなかった。
 A受審人は、日立港に接近し、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で北上を続け、11時37分日立港東防波堤灯台を右舷側に見て航過したとき、同港の南防波堤に多数の釣り人を認め、同防波堤の北側近くに錨泊する予定を中止し、東防波堤西側をこれに沿って北上したのち北口から出航して帰途につくこととし、同時43分わずか前北防波堤灯台から185度670メートルの地点で、針路を北口に向かう014度に定め、同速力のまま、手動操舵で進行した。
 A受審人は、11時46分少し前北防波堤灯台から075度120メートルの地点で、針路を057度に転じて北口を出航し、同時47分少し前北防波堤灯台から064度370メートルの地点に達したとき、前方60メートルばかりのところに白波を認めたが、日立港北部の水路調査を十分に行っていなかったので、この白波がトゲ磯によって生じていることや、同磯周辺に点在する浅所の位置を確認しないまま、反転して港内に戻ろうと左舵を取り、左旋回中、11時47分船首が245度に向首し、ほぼ反転したので舵を中央に戻したとき、北防波堤灯台から060度380メートルの地点において、原速力のままトゲ磯西側の水深0.6メートルの浅所に乗り揚げ、これを擦過した。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、潮高は約41センチメートルであった。
 衝突の結果、両舷機ドライブユニットの中間軸折損、右舷機プロペラ軸曲損、両舷プロペラ翼曲損及び船尾船底外板に擦過傷をそれぞれ生じて航行不能となり、乗揚地点付近に錨泊中、通りかかった水上オートバイにより日立港の岸壁に引き付けられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、茨城県日立港の北口を出航する際、水路調査が不十分で、同港北部に点在する浅所に接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、茨城県日立港の北口を出航する際、前方に白波を認めた場合、この白波が干出岩を含むトゲ磯の存在によって生じていることや、同磯周辺に点在する浅所の位置が分かるよう、同港北部の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、白波を避けて航行すれば大丈夫と思い、日立港北部の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、この白波がトゲ磯によって生じていることや、同磯周辺に点在する浅所の位置を確認しないまま、白波を避けるために左転して同磯西側の浅所に乗り揚げる事態を招き、両舷機ドライブユニットの中間軸折損、右舷機プロペラ軸曲損、両舷プロペラ翼曲損及び船尾船底外板に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。





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