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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第43号
件名

漁船第21大豊丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年11月30日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(河本和夫、平田照彦、平野浩三)

理事官
弓田

受審人
A 職名:第21大豊丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底全般に擦過傷等

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月26日19時30分
 長崎県西彼杵半島西岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第21大豊丸
総トン数 16トン
登録長 14.82メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 257キロワット

3 事実の経過
 第21大豊丸(以下「大豊丸」という。)は、中型まき網漁業の運搬船として操業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾1.5メートルの喫水で、平成12年6月26日17時30分船団の僚船とともに長崎港を発し、西彼杵半島西方沖合の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、夕刻出港して翌朝07時ごろ帰港する夜間操業を繰り返しており、このところ同漁場での漁模様が好調で連日出漁し、水揚げを終えて帰宅後約5時間の睡眠をとっていた。
 A受審人は、舵輪の前のいすに腰掛けて手動操舵にあたり、長崎港口を通過後西彼杵半島西岸に沿って北上し、19時06分ノ瀬灯標から305度(真方位、以下同じ。)1.9海里の地点において、針路を312度に定め、5.1ノットの速力として舵輪左側前方のソナーで魚群を探索しながら進行し、同時09分ごろ小城鼻を航過したころ、海上は穏やかで気になる他船もいなかったので気が緩み、眠気を催したが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、いすから立ち上がって操船するなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、そのままいすに腰掛けて操船中、いつしか居眠りに陥り、舵輪を右方向に押さえる姿勢となった。
 こうして大豊丸は、右転しながら陸岸に向かって進行し、19時30分ノ瀬灯標から323度3.5海里の浅瀬に、同速力のまま陸岸にほぼ直角に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の西風が吹き、海上は穏やかで、潮候は下げ潮の末期であった。
 A受審人は、乗揚の衝撃で目が覚めて事後の措置にあたり、来援した僚船に引き出され、同県野母崎の造船所までえい航された。
 乗揚の結果、大豊丸は、船底全般に擦過傷を生じ、推進器翼、推進軸、舵軸及びシューピースを曲損し、ソナー等の船底突起部を破損したが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、魚群を探索しながら長崎県西彼杵半島西岸に沿って北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、陸岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、いすに腰掛けて魚群を探索しながら、手動操舵により長崎県西彼杵半島西岸に沿って北上中、眠気を催した場合、居眠りに陥ることのないよう、いすから立ち上がって操船するなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、舵輪を右方向に押さえる姿勢となって陸岸に向首したまま進行して乗揚を招き、船底部全般に擦過傷を生じさせ、推進器翼、推進軸、舵軸及びシューピースを曲損させ、ソナー等の船底突起部を破損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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