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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第50号
件名

旅客船ウイングせがわ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年11月29日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:ウイングせがわ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷推進翼及び推進軸を曲損等

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は、針路の保持が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年11月20日08時40分
 九州西岸九十九島

2 船舶の要目
船種船名 旅客船ウイングせがわ
総トン数 19トン
全長 18.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 842キロワット

3 事実の経過
 ウイングせがわは、長崎県瀬川港と佐世保港との間に就航するFRP製定期旅客船であるが、当日は団体旅行者の臨時輸送の目的で、A受審人ほか1人が乗り組み、船首0.8メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成12年11月20日07時00分瀬川港を発し、平戸港に至ったものの、しけ模様のため団体旅行者の乗船が中止となり、08時10分同港を発航して帰途に就いた。
 A受審人は、出航して間もなく、機関を25.0ノットの全速力前進にかけ、操舵室右舷寄りにあるいすに腰を掛けて手動操舵で南下し、青砂埼に並航したころ、往航時南東の風が強かったことから、鹿町、小佐々町の沿岸である通称九十九島の海域を航行することとし、途中、機関を半速力や微速力前進として一時的に速力を減じながら島しょの間を南下した。
 A受審人は、こうした団体客の輸送にこれまでも何度となく従事しており、そのときは、九十九島の観光も兼ねていたので、島々を縫う航路については以前から調査するとともに自らが操船して何回も航行していた。
 08時38分A受審人は、臼浦港楠泊東防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から301度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点に至ったとき、浅島と陸岸とがなす可航水域200メートルばかりの水路に入ることから、機関を14.0ノットの微速力前進として水路のほぼ中央をこれに沿って航行した。
 A受審人は、左舷側のいすに腰を掛けて見張りを行っていた甲板員と会話を交わしながら進行し、08時39分半防波堤灯台から293度1.55海里の地点に達し、船首を徐々に右に転じていたとき、同水路の南口に出て水路が開放されたことから気を許し、針路の保持を十分に行うことなく、舵を握ったまま甲板員との会話に気を奪われていたので、船首が予定の針路から30度ばかり右に偏する257度となっていたが、このことに気付かずに続航中、08時40分防波堤灯台から289度1.65海里の地点において、浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は小雨で風力4の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、両舷推進翼及び推進軸を曲損し、推進軸取付け部、右舷機クラッチを損傷した。

(原因)
 本件乗揚は、九州西岸九十九島の狭い水路において、針路の保持が不十分で、浅所に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、九州西岸九十九島の狭い水路を航行する場合、操舵に専念して針路を保持すべき注意義務があった。しかるに、同人は、甲板員と会話を交わして針路を保持しなかった職務上の過失により、浅所に向け進行して乗揚を招き、推進器などを損傷させるに至った。





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